中国「ゼロコロナ」維持のため、市民にPCR常態化政策 検査費用が国防予算を上回るとの試算も

2022年6月13日 18時41分
 新型コロナウイルスの感染ゼロを目指す「ゼロコロナ政策」を続ける中国政府は、経済活動の停滞を避けるため、都市部を中心に市民が2〜7日に1回程度のペースでPCR検査を受ける「常態化」政策に踏み切った。PCR検査に人手と資金を集中させる力業となり、年約1兆7000億元(約34兆円)が必要との試算もある。(北京・白山泉、写真も)

◆陰性証明は「第2の身分証」

 北京市内では5月下旬以降、PCR検査を行う小型の検査所が街角のあちこちに設置され、市民が行列を作っている。市当局が、ビルや飲食店、公園、地下鉄駅などに入る際に、3日以内の陰性証明の提示を義務づけたためだ。検査を受けなければ日常生活が送れなくなるため、陰性証明は事実上、「第2の身分証」(中国誌)となった。

北京市内の地下鉄駅で9日、乗客のスマートフォンに表示された陰性証明を確認する駅職員(右奥)

 検査は無料で、検査翌朝には陰性証明がスマートフォンの専用アプリに表示される。クラスターをいち早く発見できるようになり、6月以降は市内の新規感染者は1日あたり数十人程度にとどまっている。
 「PCR常態化」には、上海のロックダウン(都市封鎖)が社会や経済を混乱させた反省がある。5月中旬、国家衛生当局の幹部が、主要都市で「徒歩15分圏内に1カ所以上の簡易検査所を設置し、定期的に検査を行う」という常態化政策を提唱した。中国経済誌によると、5月下旬時点で、北京や上海など31都市がこの政策を採用し、河南省など一部では省全体での導入を決めた。

◆PCRで新たなビジネスチャンスも

 常態化政策は一部で商機となった。河北省の工場用エアシャワー製造会社の営業担当者は「5月以降、検査ステーションを大量に受注している」と話す。

北京市のマンション敷地内に設置された検査所で5月31日、PCR検査を受ける男性

 中国のネット通販サイト「タオバオ」では、大小さまざまな検査ステーションが売られている。価格は6万〜90万円と幅があり、夏場作業の負担を考慮した冷房完備の商品もある。
 中国の証券系シンクタンクの試算によると、仮に国内の全ての主要都市(人口計約5億人)が、全市民に2日に1回の検査を義務付けた場合、検査所は約17万カ所、検査人員は120万人以上が必要になる。すでに検査人員の争奪が過熱し、月給は地域によっては2万5000元(約20万〜50万円)と高騰している。

◆「PCRが最も経済的」も…費用は年間34兆円

 中国はこれまでワクチン接種やPCR検査の費用は、国と地方の財政や医療保険基金で負担してきた。しかし経済活動を維持するための検査「常態化」によって、巨額のコスト負担も「常態化」することになる。
 同シンクタンクの試算によると、検査所設置や検査試薬、人件費などで最大で年間約34兆円が必要になる。国と地方を合わせた予算規模の約8%にあたり、国防予算(約29兆円)を上回る。
 9日の国家衛生当局の記者会見で、担当者は「PCRは感染予防の重要な手段であり、最も経済的で有効な措置だ」と述べたが、費用には言及しなかった。習近平政権はゼロコロナ政策の「成功」を誇示するため、コスト度外視の力業を続けざるを得ない状況だ。

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