「聖地」であり続けて 旧国立グラウンドキーパーがエール

2019年12月28日 16時00分

旧国立競技場の写真を手元に、取材に応じる渡辺茂さん=東京都渋谷区で

 一九六四年東京五輪の陸上競技をはじめ、数々の名勝負が繰り広げられ、「聖地」とたたえられた旧国立競技場。日本スポーツ振興センター(JSC)の渡辺茂さん(60)は、グラウンドキーパーとして三十六年にわたり熱戦の舞台を支えた。来年一月一日に初のスポーツ公式戦となるサッカー天皇杯決勝が行われる、新しい国立競技場は渡辺さんの手を離れたが「担当者はベストを尽くして」とエールを送る。

旧国立競技場の芝=独立行政法人日本スポーツ振興センター提供

 渡辺さんは七八年、特殊法人の国立競技場(当時)に入社。以来、芝の管理や陸上トラックの整備などに携わってきた。当時から新しい競技場と同様に天然芝を採用していたが、暑さに強い夏芝のみを使っていたため、冬季は芝が「冬眠」し、グラウンド一面が真っ黄色になっていた。
 欧州と南米のサッカークラブ王者が対戦するトヨタカップが開催された際には、黄色くなったグラウンドで試合前日の練習を行った欧州のクラブの監督が「明日の試合会場はどこだ」と発言したこともあったという。
 世界の一流選手にも満足してもらえる芝を-。渡辺さんたちが改良に取り組んだのは八〇年代後半から。一年中緑を保つゴルフ場の芝にヒントを得て、九~十月に寒さに強い冬芝の種をまく「オーバーシード」を行い、常緑のスタジアムとなった。
 最初の十年くらいは手探りだった。肥料や水をまくタイミング、芝を刈る長さ…。徐々にノウハウを蓄積し、サッカーやラグビー、陸上など、数々のビッグイベントを良い状態で迎えられるよう、逆算して作業を進められるようにもなった。
 「選手が何の心配もせずプレーできるのがよいこと」との考えから、直接芝への意見や感想を聞いたことはない。ただ、サッカー日本代表だった選手が「国立の芝はいいですね」と評価していたと人づてに聞いた時は、うれしさがこみ上げた。
 旧国立競技場は二〇一四年、その歴史に幕を下ろした。毎日競技場に手をかけてきただけに「一区切りという気持ちと、やっぱりさみしさがあった」と振り返る。
 新しい国立競技場の管理は、JSCが委託した業者が行う。天然芝の生育を促す地中温度制御システムを導入し、屋根も設置される。
 渡辺さんは「今までとは全く違うものになるだろうが、経験を蓄積していってほしい」と言葉に力を込めた。

関連キーワード

PR情報