「生命の起源は宇宙」説を後押し 「はやぶさ2」が持ち帰った砂からアミノ酸

2022年6月14日 06時00分

小惑星探査機はやぶさ2再突入カプセルの「背面ヒートシールド」

 私たちはどこから来たのか—。探査機「はやぶさ2」が持ち帰った小惑星りゅうぐうの砂から、有機物のアミノ酸23種類が見つかった。アミノ酸は生物の体をつくるのに欠かせない。「生命の材料が宇宙から運ばれて生命の起源となった」という説を後押しすると注目される。アミノ酸の細かい構造など分からない部分もあるが、分析した試料はまだ一部で、専門家は今後に期待する。(増井のぞみ)

◆生命の種は隕石が運んだ?

 山岸明彦・東京薬科大名誉教授(宇宙生物学)は「期待通り」と話す。「生物の体をつくるアミノ酸が11種もあった。小惑星が太陽系の他の惑星にもアミノ酸を運び、地球以外に生命が誕生している可能性が高まったのではないか」と意義を語る。
 地球は約46億年前に誕生した。直後の数千万年間、マグマに覆われた灼熱しゃくねつの世界だったと考えられている。そのマグマが冷えた後、どのように地球に生命の芽がもたらされたのか。
 一つの有力な考え方は隕石いんせきによるという説だ。隕石は、小惑星やその破片などが地球に落ちたもの。りゅうぐうからアミノ酸が見つかったことは隕石説を支持する結果だ。
 りゅうぐうの砂には、地球の生物の体をつくるアミノ酸20種のうち11種が含まれていた。例えば脳の信号伝達に使われるグルタミン酸、エネルギー源となるアスパラギン酸などだ。
 アミノ酸を検出した岡山大の小林桂教授(物質科学)は「太陽系が誕生してまもなく天体上で、単純な有機分子が鉱物に仲立ちされ反応し、アミノ酸ができた」と推定する。1969年にオーストラリアに落ちたマーチソン隕石など、これまでに見つかった隕石からは80種を超すアミノ酸が見つかっている。

◆懐疑論「隕石ではなく、地球上でできた」

 一方、隕石以外でも材料はそろうとする説もある。藤島皓介・東京工業大准教授(宇宙生物学)は「隕石は、落下する頻度や場所にばらつきがある。一方、地球上でも、雷や紫外線による化学反応あるいは熱水環境で、アミノ酸などの有機物ができることが確認されている。地球の方がより安定して生命の材料を供給できると考える」と話す。
 今回、見つかった生物の体をつくる11種のアミノ酸は「初期の地球環境でもできやすいアミノ酸がすべて含まれている」として隕石説には懐疑的だ。

◆左手型ならば隕石、右手型ならば地球

 アミノ酸には右手と左手のように、構成する要素は同じでも、並び方が鏡に映したように逆になっているものがあり「右手型」「左手型」と呼ばれる。同じ型同士をつなげないとうまく生命の部品をつくれない。左右どちらかを選ぶ必要がある。地球の生物は左手型からできた。その理由を探るのも目標の一つだ。
 通常の化学反応では、右手型と左手型が同じ量だけできる。ところが、マーチソン隕石のアミノ酸には左手型が多いものもあった。
 今回、小林教授らが分析に使った砂はわずか一粒2ミリグラム。右手型、左手型のどちらが多いかを調べるには量が足りなかったという。今後、新たな砂で立体構造を調べるが「微量なので、やり直しの利かない手作業の一発勝負。地球の有機物が付着して汚染されないよう慎重にやり遂げたい」と小林教授。九州大なども夏ごろ、りゅうぐうのアミノ酸の分析結果を発表する。左手型が多ければ隕石説を補強する材料になる。逆ならば地球説を含め、さらに議論が白熱するだろう。

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