日常生活に支障 原発性局所多汗症 夏の脇汗、新薬が味方に 保険適用塗り薬とシート型  

2022年6月14日 09時18分
 薄着になる夏が近づいてきた。服に大きな染みができるなど汗に悩む人も多いだろう。手のひらの汗で持っている紙が破れたり、スマートフォンの画面が反応しなかったり、日常生活に支障が出るほどの汗をかく場合は、多汗症の可能性がある。脇の多汗症向けには保険適用の治療薬が相次いで登場しており、医師は「気軽に受診を」と呼び掛ける。 (細川暁子)
 愛知県の女性(33)は、小学生の時から大量の汗に悩んできた。夏場は少し歩くだけで、脇や顔から汗が噴き出る。「体を冷やそうと服の下に保冷剤を入れている」。その上で汗染みを隠すためカーディガンをはおる。「体がベタベタ。近寄らないでと思ってしまう」
 汗は緊張などのストレスで出ることもあるが、主な役割は体温調節だ。暑かったり運動したりして体温が高くなると汗腺から分泌され、皮膚の上で蒸発する際に熱を奪って体の表面を冷やす。一方で明らかな原因がないのに、六カ月以上にわたって手のひらや足裏、脇の下、頭、顔など特定の部位に集中して過剰に汗をかく状態が続く場合は「原発性局所多汗症」の可能性がある。日本人の十人に一人は多汗症ともいわれる。
 池袋西口ふくろう皮膚科クリニック院長の藤本智子さんは「手の汗でスマホやパソコンが反応しない、美容師がはさみを握れないなど仕事に深刻な影響が出ている例も多い」と話す。日本皮膚科学会の診療ガイドラインによる診断基準は、最初の症状が出たのが二十五歳以下▽日常生活に支障をきたす−など六項目。二つ以上当てはまれば、多汗症と診断される。
 従来からあるのは、塩化アルミニウムを含む制汗剤を、手のひらや脇の下などに塗る治療法だ。塩化アルミニウムには、汗の成分と結び付いて、汗の出口をふさぐ効果がある。ただ、保険適用になっている薬がないため薬局や病院で調剤してもらう必要があり、取り扱いは各医療機関による。
 そうした中、二〇二〇年十一月、脇の下の多汗症に有効として保険適用になったのが科研製薬(東京)の塗り薬「エクロック」だ。多汗症の汗は、発汗を促す神経伝達物質「アセチルコリン」が汗腺の受容体を刺激するのが原因。ジェル状の薬の有効成分が汗腺の受容体と結びついて固まり、アセチルコリンとの結合を防ぐ仕組みだ。入浴後などに一日一回塗る。
 加えて今年五月には、マルホ(大阪)が脇の下に使う保険適用薬として「ラピフォート」の販売を始めた。一日一回、一枚を袋から出して使うシートタイプだ。同社が一月、脇汗に悩みを抱える十五〜六十九歳の男女千五百五人に聞いたところ、「外出するのが不安、おっくうになる」「人間関係や恋愛に支障が出ている」と答えた人はいずれも六割近くに=表。脇汗が対人関係にも影響を及ぼしていることがうかがえる半面、受診した人は約一割にとどまった。
 全身に大量の汗をかく場合は、甲状腺異常など別の病気が隠れている可能性もある。藤本さんは「悩んでいれば積極的に受診してほしい」と呼び掛ける。

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