親友の結婚式、ご祝儀出せず「仕事」とうそ...物価高なのに上がらない給料、減る年金<参院選・くらしの現在地①>

2022年6月15日 06時00分
 5月の給与明細を見ても昇給はなかった。首都圏の食品工場で働く男性(32)はパートから正社員になって1年以上たつが、手取りは18万円のままだった。
 「やっぱり上がらないのか…。物価は上がっているのに、また生活ができなくなる」と不安を覚えた。

◆「年金の保険料すら払えない」

低賃金に物価高が重なり、生活苦に陥っている現状を話す男性=東京・内幸町で(内山田正夫撮影)

 菓子職人を夢見て20歳で洋菓子店の正社員として働き始めた。1日15時間超、勤務し休みは週1日。月給は16万円で残業代は出ない。年金や医療の保険料は「自分で払え」と店主に言われた。そんな余裕はなく5年で限界を迎えた。
 「年金の保険料すら払えない」と不安を感じ、6年前に今の食品工場にパートで入った。手取りは勤務時間帯によって14万〜20万円で変動。家賃7万円や光熱費、前職時代の借金の返済で、生活はぎりぎりだった。

◆「パートでも正社員でも、ずっと賃金低いまま」

 正社員より月2〜3日、休みを減らして残業した。食事は1日1回だけにし食費を1000円節約。それでも貯金はない。ご祝儀が出せず、親友の結婚式に「仕事」とうそをついて欠席した時は情けなくて涙が出た。
 ようやく昨年、正社員に登用された。だが手取り額はあまり変わらなかった。そこに生活必需品の値上げが襲った。月6000円程度の印象だった電気代が、今年2月には1万3000円を超えて焦った。パート時代のように働く日は増やせず、副業も禁止されている。
 3月に友人とルームシェアを始め、家賃など固定費を半分にしたが「物価がもっと上がると打つ手がない」。焦りとともに疑問が募る。「パートでも正社員でも、就職してからずっと賃金は低いままだった」

◆「病気した瞬間に行き詰まる」70代女性の不安

年金だけでの生活が苦しいため看護師の仕事を続ける女性=茨城県内で(坂本亜由理撮影)

 「値上げが続いているのに年金は減るんだ…」。茨城県内の女性(73)は6月上旬、2022年度の年金支給額が前年度より8152円(0.4%)減ることを知らせる書類を見てつぶやいた。
 40年以上看護師を務め、保険料を納め続けた年金の手取りは月12万円。1人暮らしのアパートの家賃で半額が消え、光熱費や食費の急騰は厳しい。50代の時、夫から生活費を渡してもらえず離婚。貯金はわずかだ。「病気をした瞬間に行き詰まる」。不安から週3日、高齢者施設で非正規の看護師として働く。
 日本総研の星貴子氏の調査(17年時点)では、収入が生活保護世帯と同水準で、世帯主が65歳以上などの条件を満たす高齢者の貧困世帯数は35年には562万世帯に達し、12年から36%増える見通し。現役時に低賃金で保険料が支払えず、年金や貯蓄が不十分で、困窮する人が増えるとの分析だ。
 女性は体力の衰えを痛感しながらも「働き続けないといけない」と言う。物価高が進む中で上がらない賃金。女性は心配する。「40年以上働いた私の年金がこの現状。給料が少ない若者の老後はどうなるのか」(山田晃史、畑間香織)
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 通常国会が15日に閉幕し、夏の参院選に向けた論戦が本格化する。急速に進む円安や物価高で、私たちの日々の生活は厳しさを増している。ロシアによるウクライナ侵攻で平和が脅かされ、コロナ禍も収まらない。切実な問題に直面している人々の声に耳を傾け、私たちのくらしの今を5回にわたって考える。

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