<突撃イバラキ>水戸のトランプ城 消えた「お化け屋敷」

2022年6月15日 07時35分

廃虚マニアの人気を集めた往年の「トランプ城」=提供写真

 茨城県水戸市の歓楽街にそびえる、あの廃虚が姿を消した。ツタで覆われた壁、その間からのぞく巨大なトランプのクイーン。見ようによっては中世ヨーロッパの城を思わせ、市民から「トランプ城」と呼ばれた建物だが、今春、約四十年ぶりに真新しく生まれ変わった。現地を訪れると、さまざまな声が飛び交っていた。(長崎高大)
 今月上旬の夜、知人の男女と連れ立ってトランプ城を目指した。水戸駅から車で十分ほどの水戸市天王町。周囲には風俗店がひしめいている。とはいえ、大きなカメラをぶら下げた三人組をうさんくさく思ったのか、客引きは誰も声をかけてこない。
 やがて、夜空の下に「城」が浮かび上がった。白い壁に青い屋根。先端には赤、青、紫と色を変えるネオンが輝いている。その姿は、まるでテーマパークの城のようだ。

5月中旬、改装した建物に40年ぶりにネオンがともった=水戸市天王町で

 少し前までは、全く違う趣だった。
 「ああ、あの『お化け屋敷』ですか。地元では有名ですよ」。市内で風俗営業関連の手続きを手掛ける行政書士の男性は語る。ややすすけた壁にツタがからまり、その間からクイーンが顔を出す。確かに、夜になると吸血鬼が飛び出す廃城みたいだ。市民の間では「あそこは『出るぞ』」といううわさもあった。
 その異様な雰囲気は、廃虚愛好家にとどまらない人気を集めた。地元出身のロックバンドがCDジャケットに写真を使ったことも。
 地域の人たちは「城」の復活をどう受け止めているのか。
 町内会長の男性(73)は「ぼや騒ぎがあったり、子どもが勝手に入ったり。とりあえず廃虚じゃなくなるのはありがたい」。風俗店関係者は「改装されたと聞き、建物の中を見たいと訪れる廃虚マニアもいるようだ」と語った。
 そもそも、なぜこんな建物が造られ、そして廃虚になったのか。
 登記の情報や地元の人たちの話をまとめると、一九七九年築の鉄筋コンクリート五階建て。ソープランドとして営業を始めた。店名は「クイーンシャトー」。だから、壁面にトランプのクイーンの図柄をあしらっていたのか。
 だが、客足は伸びなかったようで、一年も持たずに閉店。それから四十年あまり、ほぼ放置されたような状態になった。ここ数年は県内の不動産会社が所有し、昨夏に東京都内の会社へ所有権が移転。今春、改装して、やはりソープランドとして営業を始めた。
 そこで少し気になることが。ソープランドを新たに開くなんていうことが許されているのか。
 風俗営業の許認可を取り仕切るのは警察。県警生活安全総務課によると、ソープランドなどの性風俗の営業は届け出だけでできる。ただ、法令の規制で、そもそも開業可能な場所はほとんどない。「お化け屋敷」と語った行政書士によると、そんな中で水戸市の天王町と泉町の一部、土浦市桜町の一部は、歴史的経緯から新規開業が認められた珍しい区域という。
 新しくオープンしたソープランドの関係者も「売り上げだけ考えたら東京とか都市部の方がいいが、ほとんどの地域は新規営業どころか既存の建物の改装すら許可されない」と話す。「城」がよみがえった背景には、水戸特有の事情があったようだ。

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