お年寄り 高い「健康度」 高齢化率日本一の群馬県南牧村

2022年6月15日 08時11分

自宅横の畑でネギ栽培の作業をする工藤光子さん(右)と孝雄さん=群馬県南牧村で

 65歳以上の人が占める割合を示す高齢化率が65.2%(2020年)と、日本一高い群馬県南牧(なんもく)村。「消滅可能性都市」にも名前が挙がった人口1600人余りの山間地の村だ。ただ、要介護の一歩手前のフレイル(虚弱)状態にある75歳以上の後期高齢者は他地域と比べて少ない実態が、民間団体の調査で明らかになった。住民が助け合って暮らす環境が社会的な孤立を防ぎ、フレイルを遠ざけているとみられる。 (五十住和樹)

■「フレイル」予防

 「体を動かす。人と話す。嫌なことがあっても明日はいいことがあると考える」。同村の工藤光子さん(78)は、フレイル予防の秘訣(ひけつ)をこう話す。
 夫の孝雄さん(78)とネギやサツマイモなどを栽培し、忙しい毎日を送る。趣味は夫婦そろってのゴルフ。約二十年前に息子たちから贈られたクラブセットを大切に使い、小学校の同級生や近隣市町村の仲間と月一、二回、コースへ出るのが楽しみという。
 雨の日は近所の女性たちとお茶会だ。話し好きの孝雄さんも参加する。伴侶を亡くした女性のため、車で一緒に買い物や食事にも出掛ける。取れた野菜を持っていくと、今度は他の人がタケノコの煮物などおかずを持って来てくれることもよくあるとか。「集落の人の健康状態はお互いに知っているので、必要な時に助け合える」と光子さん。
 村では、一般社団法人「日本健康寿命延伸協会」(東京)が二〇一八年秋からフレイル調査を実施。同年は要介護認定を受けていない七十五〜九十三歳の住民二百六十八人(平均八一・五歳)の握力や歩行速度など身体的データのほか、認知機能や生活状況などを調べた。
 その結果を分析した研究グループの一人、元東京都健康長寿医療センター循環器内科医師で現開業医の杉江正光さん(47)によると、愛知や千葉など七府県での先行調査で、身体的フレイルが見られる割合は七十五〜七十九歳で10%、八十〜八十四歳で20・4%。一方、村ではそれぞれ3・7%、6・6%と少なかった。

■認知症率も低く

 また、認知症の人の割合は、愛知県大府市など六自治体の六十五歳以上の約五千人を対象とした調査で15・75%だったが、村は七十五歳以上で13・1%。社会的孤立と判定された人は、岩手県花巻市の五十五歳以上で19・4%に上ったのに対し、村では七十五歳以上で7・8%にとどまった。
 〇七年九月の台風襲来時には村内の道路が寸断され、多くの集落が孤立状態になった。長谷川最定(さいじょう)村長(68)によると、停電や断水が続く中、各集落の住民同士が互いに安否を確認し、炊き出しをしたという。長谷川さんは「役場が対応する前に共助が働いた。昔から住民のつながりが深く、どの人が支援が必要か互いに分かっている。日常的な助け合いがあるので孤立感は少ないのでは」と話す。
 工藤さん夫婦に限らず、体の動くうちは畑仕事を続ける住民は多い。村の女性保健師は「それが気分転換や生きがいになる。元気な高齢者が多いと実感している」と言う。
 杉江さんらの研究では、社会的孤立が高齢期のうつ(心理的フレイル)を招き、さらに身体的フレイルや認知機能低下につながることも分かったという。杉江さんは「この悪循環を止めるためには孤立予防が重要。身体的な健康と認知機能の維持には心理的な健康が鍵となる」と指摘する。

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