「建材ロス」解決へ、若手建築士が起業 未使用品回収し販売

2022年6月16日 12時00分
 建築資材が工事現場で余り、未使用のまま捨てられる「建材ロス問題」を解決しようと、一級建築士の若者が未使用品を回収し低価格で販売する「建材アウトレット事業」を始めた。2021年4月に起業し、資源循環への関心の高まりや原材料高騰を受けて需要が増加。「建材ロスの『ツケ』を未来に残したくない」と奔走する。(押川恵理子)

建材の回収や管理、販売までを一人でこなすハブアンドストックの豊田訓平社長=東京都板橋区で

 約20坪の倉庫に未使用の床材や壁紙やタイルなどが並ぶ。「回収しなければ捨てられていた」と話すのが、一級建築士の豊田訓平さん(29)だ。資源をつなぐハブ(拠点)を目指そうと、建材アウトレットのスタートアップ(新興企業)「HUB&STOCK(ハブアンドストック)」(東京都板橋区)を設立した。
 建材ロスが生じる背景にあるのは、建設業界の慣習だ。工事現場では作業ミスなど不測の事態に備え、建材を必要量より1.2〜2倍弱ほど多く発注するが、工事が順調に進めば建材は余る。保管や再資源化のコストよりも廃棄処分の方が安く済むため、新品でも捨てられる場合が多い。
 かつて大手ゼネコンとインテリアデザイン事務所で設計を担当していた豊田さん。「自分も余らせる側だった」が、「この問題を無視して人生は進めない」と決意。社会貢献事業の「ボーダレス・ジャパン」のグループ企業として創業した。

ハブアンドストックの商品を使ったアパートの改修例。棚板などを使いリモートワークの空間をつくった=2022年2月、埼玉県戸田市で(ハブアンドストック提供)

 今は内装用の建材を中心に買い取る。社員はまだいないため、自分で2トントラックを運転し、工務店などを回って建材を買い取る。一つずつチェックし、品番や数量を確認する。取扱商品は約600種類、1万2000点。作業は手間と時間がかかり、建築の知識も必要なため、一般のリサイクル業者は参入しづらいという。会社員時代と比べ収入は減り、休み返上で働くこともあるが、豊田さんは「自分が動くことで、建材ロスの問題を多くの人に知ってもらいたい」と話す。
 回収した建材は卸価格より2、3割安く販売しており、住宅の小規模リフォームやDIY用の需要がある。建材の回収先は工務店など約20社。ホームセンターの「山新」(水戸市)と提携し、茨城県つくば市内の店舗にアウトレット建材のコーナーも今春開設した。売り上げは伸び、今年3、4月は単月黒字を達成した。まずは国内の建設廃棄物の半量を占める関東四都県で資源循環のモデルを整え、5年後をめどに東南アジアでの展開を目指している。
 建材回収などの問い合わせはハブアンドストックのウェブサイトhttps://hub-st.jp/へ。

◆リサイクルされず産廃の最終処分場へ 首都圏は5年半で満杯に

 これまで内装などの建材はあまりリサイクルされてこなかった。国土交通省の調査によると、建設現場から出たごみ全体のリサイクル率は9割を超えるが、建材を含む「建設混合廃棄物」は5割にとどまる。廃プラスチックやガラス、木くずなどが交ざり、分別が難しいためだ。
 国交省の建設副産物実態調査(2018年度)によると、建設混合廃棄物のリサイクル率は50.4%で、木材の91.7%、コンクリート塊の99.3%に比べて大幅に低い。
 ただ、建設混合廃棄物の排出量はごみの約3%を占め、年228万トンに上る。リサイクルされないため、4割弱の84万トンが産廃の最終処分場に埋め立てられているのが実態だ。このままでは全国の産廃の最終処分場はあと17年で、首都圏は5年半で満杯になるペースという。国交省の担当者は「建設混合廃棄物の実態を調べ、排出量そのものを減らす方策を検討している」と述べるものの、具体策は示せていない状況だ。

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