「母国の希望に」夢へ走る 東京パラ目指すトーゴの義足選手

2019年12月21日 16時00分

トレーニングで汗を流すメンサさん(左)と、サポートする義肢装具士の沖野敦郎さん=東京都北区の都障害者総合スポーツセンターで

 2020年東京パラリンピックの出場を目指す西アフリカのトーゴで初の義足ランナーの男子選手を、義足や義手作りの専門家による日本義肢装具士協会(東京)が支援している。高価で現地では普及していない競技用の義足を提供し、陸上の100メートルで東京の舞台に立つ夢を支える。今年4月に初めて義足で走った選手は、母国で同じ境遇にある人の希望になろうと練習に励む。 (神谷円香)
 今月十六日、東京都北区にある都障害者総合スポーツセンターのトラックで、トーゴから来日した電気工事士クアクメンサ・エデム・コジョ(通称メンサ)さん(36)が走った。膝から下がない左脚に「板バネ」と呼ばれるくの字形のカーボン製義足を装着。脚の運びはぎこちないが、ピッチは速い。100メートルのタイムは自己新の21秒48。四月の初計測と比べると17秒以上の短縮だ。「惜しい。スタートはすごく良かった」と協会員の沖野敦郎(あつお)さん(41)。メンサさんも「やればできる」と喜んだ。
 日本に住むトーゴ人の義肢装具士アドウアヨム・アヘゴ・アクエテビさん(33)が、国際協力を考えていた協会に紹介したのが縁。メンサさんは六歳のときに交通事故で膝から下を失ってから本格的にスポーツに打ち込んだ経験はないが、力仕事で鍛えられた身体と素質を見込まれた。今春、沖野さんとアヘゴさんがトーゴを訪ね、脚を収めるソケット部分を製作。東京大会への挑戦が始まった。
 初来日の目的は、義足の調整とトレーニング指導。九~十六日の滞在中、沖野さんが義足製作を担当するアスリートで東京大会日本代表に内定している山本篤選手(37)=新日本住設=から、個人レッスンを受ける機会にも恵まれた。メンサさんと同じ左脚の大腿(だいたい)義足で義肢装具士でもある山本選手は、義足に体重を掛けきれない様子を見て「股関節を回して」「しっかり脚を振れば絶対に転ばない」などと助言。その効果もあり、メンサさんは一週間の滞在でタイムを4秒近く縮めた。
 メンサさんの障害クラスの100メートルの東京大会参加標準記録は15秒60。突破は容易でないが、トレーニングの成果が出始め、アヘゴさんも「良い結果を見せて、障害者もスポーツができるという見方がトーゴで広がれば」と期待を抱く。母国に出場枠が与えられるよう、来年四月一日までの国際パラ陸連公認大会で突破を目指す。動画に収めた山本選手のトレーニング法を帰国後も実践するトーゴのパイオニアは、「東京パラリンピックを目指して頑張る」と夢を膨らませる。

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