参院選、主要9政党の公約に足りないものは…与野党に求められる説明責任

2022年6月18日 06時00分

国会議事堂。手前が参議院(本社ヘリ「あさづる」から)

 自民党が16日に参院選公約を発表し、主要9政党の公約が出そろった。政権政党が打ち出す公約の意味合いとは何か。訴えは有権者に届くのか。早稲田大学マニフェスト研究所の中村健事務局長とともに考えた。(デジタル編集部・岩田仲弘、福岡範行)

◆目立つ「意気込み」 見えぬ検証

 自民党が旧民主党から2012年に政権を奪還して10年になる。今回改選される参院議員が臨んだ2016年選挙で当時の安倍晋三首相(自民党総裁)は公約で「政権奪還から3年半、経済最優先で取り組み、道半ばだが、アベノミクスは確実に『結果』を生み出している」と強調していた。公約冒頭に「回り始めた経済の好循環をさらに加速させ、あらゆる政策を総動員して戦後最大のGDP600兆円経済を目指す」と打ち出した。
 さらにその具体策として「最低賃金1000円を目指す」「訪日外国人旅客2020年に4000万人」「農林水産物の2020年輸出額1兆円目標を前倒しする」ーなどの目標を掲げた。
 一方、今回の参院選では、GDP600兆円の目標について、どの程度達成されたかどうかを含めて明示していない。最低賃金の目標値も書かれていない。数字を伴わない「意気込み」が多いのは6年前も同様だったが、今回は、主要な政策の数値目標がない分、際だって見える。
 高市早苗政調会長は16日の記者会見で、「アベノミクスの成果により名目GDPが2019年度には557兆円に伸びた」と強調する一方、「6年前と今年では経済状況に大きな変化がある。その後(19年以降)は、新型コロナウイルスの感染拡大とともに伸びが止まっている」と目標未達成の理由を説明した。今後、過去最高額の107兆6000億円に上る本年度予算や原油価格物価高騰総合対策を通じて「再度GDP600兆円に向けて経済活動はしっかりと支えていきたい」とも訴えた。

参院選公約について話す早稲田大マニフェスト研究所の中村健事務局長=東京都新宿区で

 中村氏はこうした自民党の姿勢について「自民党は(6年前の数値目標という)これだけ分かりやすい検証材料があるのだから、それを提示するのは国民に対する説明責任でもある」と指摘する。「参院選は政権選択選挙ではないが、選挙期日が決まっており、次期衆院選に向けた『中間選挙』という意味合いがある。公約の進捗しんちょく状況を共有し、振り返るための選挙と位置付けられる」からだ。
 未曽有のコロナ禍が公約の実現に大きく影響したことは容易に想像できる。訪日外国人も2018年には3000万人を突破しており、コロナ禍がなければ達成は不可能ではなかった。また、農林水産物の輸出額1兆円は2020年からの前倒しこそできなかったものの、21年に達成している。こうした実態を示しつつ、新たな目標を掲げて、有権者に問うべきだろう。

◆野党こそ詳しい戦略を

 一方、野党はどうか。中村氏は「与党は政権を担う以上、(支持団体などとの)調整、相談した結果、公約が丸くなりがちだが、野党は逆に、そこに切り込める点で有利だ」という。
 「最低賃金1000円」を巡り、高市氏は会見で「私たちはできる限り早期に全国加重平均が1000円以上となることを目指している」と述べたものの、公約には「最低賃金引き上げ」としか盛り込まなかった。
 党側は説明の中で、最低賃金の引き上げが中小企業の負担増につながることに自ら言及しており、公約の書きぶりにも影響した可能性がありそうだ。中小企業経営者は自民党の有力支持層と重なるだけに「公約が丸くなった」ともいえる。
 最低賃金を巡り、野党は立憲民主党、共産党、れいわ新選組、社民党が「1500円」の目標を掲げた。中村氏は「なぜ1500円なのか、どうやったら実現可能か、与党が打ち出せないところまで野党は戦略を出すべきだ」と求める。

◆場当たり脱却へ 将来の国家像を示せるか

 中村氏は、今回の選挙公約は与野党通じて「個別の政策の方針、方向性は分かるが、それを実行することで日本がどうなって、国民の生活がどうなるか、どの政党の公約にも描かれていない」と批判する。
 自民党は特に「歴代政権とも、キャッチフレーズは出てくるが、将来的なビジョンが出てこないため、政策が場当たり的に羅列されている印象がある」という。与野党は今後の論戦を通じて、有権者に将来的な国家像を示していく必要がある。
【関連ページ】参院選2022特設ページ

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