長男殺害元次官 保釈 実刑では異例

2019年12月21日 02時00分

保釈され、東京拘置所を出る元農水次官の熊沢英昭被告=20日午後、東京都葛飾区で

 東京都練馬区で六月、自宅で長男を刺殺したとして殺人罪に問われ、一審東京地裁の裁判員裁判で懲役六年の判決を言い渡された元農林水産事務次官の熊沢英昭被告(76)について、東京高裁(青柳勤裁判長)は二十日、保釈を認める決定をした。保釈請求を却下した地裁決定を取り消した。保釈保証金五百万円は即日納付され、保釈された。
 殺人罪で実刑判決を受けた被告の保釈が認められるのは異例。十六日にあった判決の翌日、熊沢被告の弁護人が保釈を請求。地裁は十八日に却下したが、弁護人が高裁に抗告していた。熊沢被告は起訴内容を認め、弁護側は執行猶予付きの判決を求めていた。
 一審判決によると、熊沢被告は六月一日、練馬区の自宅で長男英一郎さん=当時(44)=の首などを多数回刺し、失血死させた。判決は「強固な殺意に基づく犯行だ」と非難する一方、発達障害のある英一郎さんを長年支えたことなどから、「執行猶予を付けるべきではないが、重い実刑にすべきでもない」としていた。

◆身体拘束 控える潮流

 殺人罪で実刑判決を受けた熊沢被告に東京高裁は異例の保釈決定を出した。被告に逃亡の恐れがないことなどが最大の要因とみられるが、必要以上の身柄拘束は控えるという近年の潮流に沿った判断とも言える。
 「被告は罪を認めており、証拠隠滅の恐れは低い。高齢でもあり、裁判所は逃亡の可能性は考えにくいと判断したのだろう」。神奈川大の白取祐司教授(刑事訴訟法)は今回の保釈決定の背景をこう推察する。
 白取教授は「珍しいケースではあるが、意外とは言えない」とも。「近年、不必要な身柄拘束はするべきでないという考えが裁判所に定着している。殺人事件も例外ではない」
 二〇一六年に講談社の元編集次長=控訴中=が妻を殺害したとされる事件でも、最終的には東京高裁が取り消したものの、東京地裁は今年三月、保釈決定を出している。
 あるベテラン裁判官は今回の保釈について「殺人は重い罪だが、家族内の事件であり、他人に危害を加える恐れは少ない。酌むべき事情が認められたというのもあるのでは」と話した。
 今後、弁護側、検察側ともに控訴期限までに控訴しなかった場合、被告は収監される。控訴した場合、二審で再び実刑判決が言い渡されれば収監されるが、執行猶予付きの判決ならそのまま社会生活を続けることになる。 (小野沢健太)

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