突然の更迭 対立浮き彫り 高市総務相と日本郵政グループ

2019年12月21日 02時00分
 かんぽ生命保険の不正販売問題は二十日、総務事務次官の事実上の更迭に発展した。不祥事に揺れる日本郵政グループは高市早苗総務相の緊急会見を「グループに大打撃を与える奇策」(関係者)と受け止め、旧郵政省出身者への「追放宣告」にも警戒が広がった。辞任が不可避となっていたグループの首脳人事も混迷を深めた。監督官庁と大企業の関係が問われる。 

▽緊張感

 「このタイミングで何をやりたいんだ。狙いが分からない」。高市氏が鈴木茂樹次官の懲戒処分を発表すると、日本郵政グループの幹部は怒声を上げた。十八日には日本郵政グループの特別調査委員会が不正販売に関する報告書を公表し、二十七日には金融庁の一部業務停止命令の発動も見込まれている。グループ全体が緊張感に包まれていた。
 高市氏は鈴木次官の情報漏えい先として日本郵政の鈴木康雄上級副社長を名指しした。同社の長門正貢社長らと情報を共有していたもようだ。日本郵政グループ関係者は「駄目押しだ。検討していた処分は当然重くなる」と、ため息をついた。
 高市氏と日本郵政グループの関係は、ぎくしゃくしていた。かんぽ生命が計画していた十月の営業再開に待ったをかけたのは、九月に総務相に復帰したばかりの高市氏。日本郵便が郵便局局員の切手着服を公表していなかったことが発覚すると「隠蔽(いんぺい)」と断じた。これに対し、日本郵政グループ内では「高市氏に敵対視されている」(ベテラン社員)との声が支配的だった。

▽古巣と対立

 今回の事態が日本郵政グループのトップ人事に影響を及ぼすのは確実だ。長門氏に加え、かんぽ生命の植平光彦社長、日本郵便の横山邦男社長は不正販売で辞任が避けられなくなっているが、政府が中心に進めている後任選定は難航。このため、日本郵政には鈴木上級副社長が代理で社長を務めるのではないかとの声が一部で出ていた。
 高市氏は、今後は総務省出身者が日本郵政グループ役員に就任することは望ましくないと明言した。「旧郵政省の人間をパージしたいんだろう」。高市氏の記者会見に憤った日本郵政グループ幹部は分析した。郵政民営化により、日本郵政グループには霞が関を去り、官僚から民間人となった社員も多い。一転、古巣と対立することになる。

▽天下り禁止?

 総務省は、大手の通信会社や金融機関、広告代理店といった産業界に幅広い人脈を張り巡らせている。元総務次官でアイドルグループ「嵐」の桜井翔さんの父親として知られる桜井俊氏は、来年一月に持ち株会社体制へ移行する電通の副社長執行役員に就任予定だ。
 高市氏は「(企業に対する)行政処分の権限が総務省にある時は、人事は十分に気を付けたい」とも語った。この“天下り禁止”とも受け止められかねない発言は、波紋を広げそうだ。大企業は、役所の行政運営や、監督の方針といった情報をいち早く得ようと官僚出身者を受け入れてきた。こうした長年の官民の慣習が変わるのか。企業側の人材戦略にも一石を投じそうだ。

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