<食卓ものがたり>まん丸 腕の見せどころ ラディッシュ(愛知県豊橋市)

2022年6月18日 07時21分

丹精込めたラディッシュを収穫する富永光昭さん=愛知県豊橋市で

 丸い根の部分は大きいもので直径約三センチ。一見、カブのようだが、アブラナ科ダイコン属の植物だ。ぎざぎざの葉に、冬は甘く、夏場はピリッと辛みが際立つのもダイコンの証し。赤い皮の下は真っ白で、紅白のコントラストが映える。
 種まきから三週間ほどで収穫でき、別名ハツカダイコンとも。愛知県豊橋市は生産量で全国シェア一位の60%を誇り、そのほとんどが同市大村地区で栽培されている。生産が始まったのは半世紀前で、現在はJA豊橋大村園芸部会に所属する十七軒が、計七ヘクタールで年間二百九十四トンを作っている。
 栽培は通年で、温度や水量、日照時間などを徹底的に管理することで生まれるまん丸の形とみずみずしい食感が売りだ。全国六十以上の市場で扱われている。父から栽培を引き継いだ富永光昭さん(53)は「先をとがらせることなく、いかにきれいな球形にするかが、農家の腕の見せどころなんです」と力を込める。
 富永さんの畑では二十年ほど前から、いち早く有機栽培を導入。肥料の調合を考え、現在の品質にたどり着くまでには数年がかかった。周囲から「そこまで手をかける必要があるか」と言われたこともあったが、見た目の美しさやおいしさに、安全性という価値を加えることができれば「もっと食べてもらえる」と確信していたという。
 とはいえ、コロナ禍で消費の多くを占める業務需要は激減した。さらに、肥料や燃料代の高騰も待ち受ける。「トップシェアの自分たちが踏ん張らないと、業界自体が危うい」。個人の消費を掘り起こそうと、即売会への出店や交流サイトでの情報発信にも熱心だ。
 「新鮮な品をその日のうちに」と投光器の明かりを頼りに、毎日午前三時から四、五時間かけて収穫する。「葉も含めてミネラル、鉄分など栄養満点。食卓を彩る目的だけでなく、どんどん味わってほしい」
 文・写真 植木創太

◆味わう

 JA豊橋などによると、出荷のピークは毎年11〜5月。時期や地域で前後するが、五つ入りで100〜200円台で手に入る=写真。
 生でも加熱しても食べられ、料理のバリエーションは豊富。富永さんのお勧めは、キュウリと一緒に薄切りにして軽く塩もみし、めんつゆであえたサラダ。手軽に色鮮やかな一品が完成する。葉は塩ゆでし水気を切った後に、ごまなどと一緒にご飯にまぜると食が進む。豊橋駅前の複合施設「エムキャンパス」内の地元食材レストランでは、葉と根の部分のかきあげも人気だ。

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