絶品焼き芋のツボ 常滑焼職人がブーム下支え

2019年12月20日 16時00分

つぼで蒸した芋を手にする壁下志保さん=名古屋市西区のPOTEPOTEで

 戦前に人気だったおやつで、つぼの中でサツマイモを焼く「つぼ焼き芋」の人気が再燃している。近年の「焼き芋ブーム」で見直され、専門店が次々と誕生。全国で三十店以上に増えた。つぼ造りをほぼ一手に担い、人気を支えているのが、愛知県常滑市の常滑焼の職人前川賢吾さん(72)だ。 (成田嵩憲)
 「あま~い」
 十一月上旬、名古屋市西区のつぼ焼き芋専門店「POTEPOTE(ポテポテ)」で、焼きたてを食べた女子高校生が笑っていた。「そんなに?」。隣にいた男子高校生が不思議そうに食べると「ほんとだ」と驚いた。
 甘さの秘訣(ひけつ)は、前川さんが製作した高さ八十センチほどのつぼ。金属製「芋掛け」に芋を載せて中に入れ、炭火の低温で一時間半ほどかけて蒸し焼きにする。しっとりとした食感と甘さが特徴で、皮ごと食べられる。

焼きたてのつぼ焼き芋。蜜があふれ出ている

 人気の火付け役は、広島県福山市の「ポットクック」の釜崎栄治代表。紅はるかや安納いもなどの品種を使った水分の多い「ねっとり系」焼き芋ブームに目を付け、さらに甘い芋が提供できないかと研究。つぼ焼き芋にたどりついたという。
 だが、専用のつぼを造るメーカーがなく、全国の焼き物の産地を歩いた。ようやく出会ったのが前川さんだ。つぼなどの大物を得意とする伝統工芸士。先代がよく造っていて、自身も数こそ少ないが製造した経験があった。前川さんにつぼを発注し、釜崎さんが二〇一五年に大阪府吹田市でつぼ焼き芋店を開くと、味はすぐに評判になった。
 釜崎さんは人気を全国区にしようと専門店を開業する希望者を募り、前川さんの協力を得てつぼを販売。POTEPOTEを経営する壁下志保さん(44)もポットクックでつぼを購入し、釜崎さんからおいしい焼き方を学んだ。
 昨年秋、東京・銀座につぼ焼き芋専門店がオープンしたことで話題となり、店舗数がさらに増加。ポットクックを通じて前川さんが受けた注文は昨年以降、年四十個を超える。
 前川さんは、二~三個を同時並行で二十日がかりで造る。「忙しくてしょうがない。でも、自分のつぼが全国で使われ、焼き芋の人気に貢献できているなら、職人として幸せなこと」と話している。

つぼ焼き芋のつぼを造る前川賢吾さん=愛知県常滑市で

◆石焼きより甘~い

 一般財団法人いも類振興会(東京)によると、つぼ焼き芋の文化は中国が発祥とされる。日本では大正期以降、東京や大阪などの大都市で人気が出た。つぼ焼き芋店は昭和期の太平洋戦争前、五百軒に上った。
 石焼き芋は戦後に台頭。安価に手に入る石は熱伝導が良く、石の上に載せた芋にまんべんなく熱を伝える。一方のつぼ焼き芋はつぼが現在でも三十万円前後と高価で、初期投資がかさむことも衰退した原因とみられる。それでも、一部の駄菓子屋などはほそぼそと続けた。
 芋と熱源を離して時間をかけて蒸し焼きにするため、水分や本来の甘みを維持できるのが特徴。近年の「ねっとり系」焼き芋ブームで息を吹きかえした。石焼き芋は芋が熱い石と接しているため、外側の水分が飛んでしまう難点もあった。
 鈴木昭二理事長は「戦後七十年の復活劇に驚いた。時間や技術が必要なため価格はやや高いが、蒸し焼きならではのうま味が人気を呼んだのでは」と語った。

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