元TBS記者の性暴力認定 東京地裁「合意ない」賠償命令

2019年12月19日 12時58分

会見する伊藤詩織さん=18日、東京・霞が関の司法記者クラブで(坂本亜由理撮影)

 ジャーナリスト伊藤詩織さん(30)が、元TBS記者山口敬之氏(53)から性暴力を受けたとして千百万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、東京地裁は十八日、「酩酊状態の伊藤さんに対し、合意なく性行為に及んだ」と認め、山口氏に慰謝料など三百三十万円の支払いを命じた。

◆伊藤詩織さん「性被害者の状況改善へ勇気」

 判決によると、伊藤さんは二〇一五年四月、就職先の紹介を受けるため、山口氏と会食した際、意識を失い、その後、ホテルで山口氏から性的暴行を受けた。
 山口氏は合意に基づいていたと反論し、伊藤さんが会見や著書などで被害を公表し名誉を傷つけられたとして、一億三千万円の賠償を求めて反訴していた。

◆元記者の供述「不合理な変遷」と裁判長

 鈴木昭洋裁判長は判決で「山口氏の供述は不合理な変遷が見られ、客観的な事情と整合しない点も複数ある点で信用性に疑問が残る」と指摘。「伊藤さんが意識を回復し、性行為を拒絶した後も体を押さえ付け、性行為に及んだ。伊藤さんは被害を受けたことで現在まで時折、フラッシュバックやパニックが生じる状態が継続している」と述べた。

◆元記者は控訴の方針

 伊藤さんが被害を公表したことについては「性犯罪被害者を取り巻く法的・社会的状況の改善につながるとして公表した。公益目的で、名誉毀損には当たらない」とし、山口氏の請求を棄却した。山口氏は判決を不服として控訴する方針。
 伊藤さんは判決後の会見で「判決は『社会的状況の改善につながる』と評価してくれた。いろんな思いで(会見するなどの)『橋』を渡ったけれど、判決に勇気づけられた」と話した。
 伊藤さんは警視庁に被害届を出し、高輪署が一五年六月、準強姦容疑で逮捕状を取ったが、当時の中村格警視庁刑事部長が令状の執行取り消しを指示、山口氏逮捕は見送られた。一六年七月、東京地検は不起訴処分にしている。(望月衣塑子)

◆公表の公益性認める

 甲南大法科大学院の園田寿教授(刑法)の話
 性行為に合意がなかったことを、飲食店やタクシー車内などホテルに入る前後の原告と被告の状況から、時系列的に無理なく認定しており、判決内容に違和感はない。原告の被害体験の公表に公益目的があるとし、被告への名誉毀損に当たらないとしたことも意義がある。
 社会的影響は大きいだろう。判決が認定した事実をみれば、原告は、準強姦罪(当時)の要件である抵抗が著しく困難な「抗拒不能」の状態にあったと言える。民事事件と刑事事件で証拠の扱い方が異なるとはいえ、東京地検がなぜ不起訴としたのか改めて疑問だ。
(2019年12月19日朝刊掲載)

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