ウクライナ侵攻長期化でNATOに足並みの乱れ 米英は徹底抗戦、独仏は早期停戦

2022年6月18日 18時31分
 ロシアのウクライナ侵攻が長期化し、北大西洋条約機構(NATO)の加盟国間で、どのように戦争を終わらせるかの出口戦略を巡る議論が活発化している。ウクライナの徹底抗戦を支持する米英などに対し、仏独は早期の停戦を探る。対ロシアで強固な結束をみせてきたNATOに、足並みの乱れが生じている。(ワシントン・浅井俊典、ロンドン・加藤美喜)

◆米国は兵器供与を拡大へ

 「ロシアの侵略はウクライナだけではなく欧州の安全保障に対する脅威であり、国際秩序への侮辱だ」
 オースティン米国防長官は、15日にブリュッセルで開かれた関係国会合で、ウクライナへの支援継続を訴えた。米国には、ロシアの侵攻を許せば「世界中で力による現状変更が横行する」(ブリンケン国務長官)との危機感があり、侵攻開始後の軍事支援は約56億ドル(約7500億円)にのぼる。
 バイデン大統領は5月末の米紙への寄稿で、核兵器の使用をちらつかせるロシアとの直接衝突回避に注意しつつ、兵器供与を拡大する意向を表明した。「ウクライナを抜きにウクライナのことを決めない」とも強調し、軍事支援を続けてウクライナの徹底抗戦を支える構えだ。

◆背景に8年前の失敗

 強硬姿勢の背景には、2014年のロシアによるクリミア併合後の対応が甘かったとの反省もある。英国のジョンソン首相は「プーチン政権との関係正常化は、14年の失敗の二の舞いになる」と訴える。
 ソ連に併合された歴史を持つバルト3国も早期停戦論に反発する。その一つ、エストニアのカラス首相は「和平が成立したとしても、占領地の残虐行為や苦しみがなくならないのは、エストニアの歴史が証明している」と言及した。ロシアの脅威にさらされてきたポーランドも同様の立場だ。

◆プーチンとの対話の可能性は?

16日、キーウでイタリアのドラギ首相㊧、ドイツのショルツ首相(左から2番目)、フランスのマクロン大統領(右から2番目)らと面会するウクライナのゼレンスキー大統領(中央)=AP

 一方、エネルギー調達でロシアに依存するイタリアや、侵攻後もロシアのプーチン大統領と電話協議を続けてきたフランスとドイツなどは早期停戦を求める。ロシアを含めた欧州の安全保障の形を探るマクロン仏大統領は「停戦実現後に外交解決を進められるよう、ロシアに屈辱を与えてはならない」と発言し、ウクライナの反発を買った。
 仏独伊の3首脳は16日、侵攻後初めてウクライナ入り。ゼレンスキー大統領は共同記者会見で「今のプーチンが誰かの意見を聴くとは思えない」と対話に否定的な考えを示したが、マクロン氏は会見後に「ウクライナの側には立つが、侵攻の深刻化を防ぐために必要だ」とロシアとの協議を続ける方針を強調した。
 米コロンビア大のスティーブン・ビドル教授(国際政策論)は「侵攻当初はウクライナ支援のために米欧はうまくまとまった。しかし戦争が膠着こうちゃく状態に入れば、各国間の意見の食い違いは避けられない」と指摘する。支援を主導するバイデン氏には「戦争長期化を見すえた協力関係の維持管理が求められる」と話した。

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