「復興五輪」道半ば 被災3県 期待と苦言

2019年12月18日 02時00分

「復興の象徴」とされる三陸鉄道でも聖火が運ばれる=岩手県普代村で

 「復興五輪」を掲げる東京五輪で、聖火ランナーは東日本大震災の被災地、岩手、宮城、福島の三県を駆ける。原発事故からの避難指示が四月に一部地区で解除された福島県大熊町を通るほか、岩手県沿岸部を走る「復興の象徴」三陸鉄道でも聖火を運ぶ。「復興状況を見てほしい」と期待の声の一方、「近所で五輪の話はほとんどしない」と冷静な意見もある。
 福島県ではサッカー施設「Jヴィレッジ」(楢葉町、広野町)をスタート地点に、東京電力福島第一原発事故による避難指示が解除された県内十市町村全てを回る。第一原発が立地する大熊町では、役場庁舎や災害公営住宅前がコースに。同町の無職男性(70)は「間近で見られるのはうれしい。リレーを通じて住民が大熊に戻ってきたと知ってほしい」と話した。
 三陸鉄道が聖火を乗せるのは岩手県普代村と野田村の間。震災で被災した三鉄は今年三月にJR山田線の一部を引き継ぎリアス線として開通したが、台風19号で再び被災し全線百六十三キロのうち六割超が不通に。来年三月の全線復旧を目指す。
 震災で約七百五十人が犠牲になった宮城県名取市閖上(ゆりあげ)地区は、かさ上げ地に住宅や商業施設の整備が進む。津波で被災し、現地再建した「ゆりあげ港朝市」を出発、慰霊碑が立つ震災メモリアル公園や住宅街を巡る。ゆりあげ港朝市協同組合の桜井広行代表理事(65)は「支援のおかげで再開できた。市場を盛り上げ感謝を伝えたい」と意気込む。
 病院や銀行の再建はまだだ。災害公営住宅に住む遠藤庄二さん(77)は「ランナーが走っても課題は解決しない。高齢の単身世帯が多く孤独死の問題も深刻だ」と話す。

◆原発避難730人 賠償5人のみ

 東京電力福島第一原発事故で福島県から山形県への自主避難者ら二百世帯七百三十人が国と東電に慰謝料など計八十億七千四百万円の支払いを求めた訴訟の判決で、山形地裁は十七日、国の賠償責任を認めず、東電に二世帯五人へ計四十四万円を支払うよう命じた。
 原告側弁護団によると、認容額は国の指針に基づく賠償額のうち受領漏れ分を補填(ほてん)したものとみられる。賠償の上積みがなく、弁護団は事実上の「請求棄却」と反発。控訴する。
 五人は妊婦や事故直後に生まれた子供らで、指針上の賠償額が四十八万円。既に四十万円の賠償を受けており、今回の認容額は一割の弁護士費用を含む八万八千円だった。他の原告は「東電が既に弁済した額を超えない」とされた。全国約三十の同種訴訟で判決は十三件目。うち国、東電双方を相手取った十件で国の責任を否定したのは四件目。
 判決理由で貝原信之裁判長は「国は(政府が地震予測『長期評価』を公表した)二〇〇二年ごろの時点で十メートル以上の津波の到来を予見できた」と認定。ただ「国が東電に防潮堤建設などの措置を取らせても、事故を防げなかった可能性が残る」とし、規制権限の不行使の違法性を否定した。

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