長崎被爆者から託された「平和の帯」 被爆3世大学生が着て核兵器禁止条約会議出席へ

2022年6月20日 06時00分

核兵器禁止条約の締約国会議に参加する若者に「平和の帯」を託した福島富子さん=神奈川県逗子市で

 核兵器禁止条約の初の締約国会議が21日、オーストリア・ウィーンで始まる。長崎市出身の被爆者で、核廃絶を訴えてきた福島富子さん(77)=神奈川県葉山町=は、新型コロナウイルスへの懸念から現地への渡航を断念。代わりに平和への願いを込めた着物の帯を、同じ長崎市出身の被爆3世、中村涼香さん(22)=上智大3年=に託した。会議にオブザーバー参加する中村さんは、着用して「核なき世界」への連帯を訴える。(大野暢子)

◆生後7か月で被爆…20歳まで両親と別れ

 福島さんには子ども時代、両親と過ごした記憶がない。生後7カ月の時、自宅で被爆。無傷だったが、4歳で遠方の親族に預けられた。「生活が苦しい時代。被爆者として差別されることも恐れたのだろう」。寂しさは親族宅にあった着物を着ることで和らいだが、思春期になると被爆の事実が心に重くのしかかった。
 20歳のころ、再び両親と住んだが、絆は回復できないまま上京。洋裁店で働き、結婚後に神奈川県に移り住んだ。2人の子を産み育てたが、被爆の記憶がないことなどが引け目となり、被爆体験を伏せていた。
 転機は2015年。米国で開かれた核拡散防止条約(NPT)再検討会議の関連行事に、神奈川県の被爆者代表として派遣され「核兵器は多くの命を奪い、生き残った家族まで引き裂いた」などと初めて半生を語った。これを機に証言活動を開始。漢字の「和」と英語の「peace」を縫い付けた帯をまとい、着物姿で各地を回っている。

福島さんが核禁会議に出席する若者に託した「平和の帯」=福島さん提供

 活動を通じ、昨年8月に出会ったのが中村さんだ。高校時代に長崎の平和団体が任命する「高校生平和大使」を務め、今は日本が核禁条約に加盟するよう求める学生らの団体を率いる。2人は証言会などで会話を重ね、距離を縮めた。

「KNOW NUKES TOKYO」共同代表の中村涼香さん

 中村さんは各国の非政府組織(NGO)に割り当てられた枠で締約国会議に参加する。福島さんの不参加を知ると「帯の力を貸してほしい」と頼み、着物とともに借り受けた。各国の要人らの目に触れることを願い、23日までの会期中、身に着けるつもりだ。

◆「帯の力借り、世界に平和訴える」

 中村さんは「核禁止が世界的に議論される初の舞台で、日本の存在感を示したい。被爆国出身者として帯は心強く、福島さんの分まで訴えたい」と感謝を胸に臨む。日本政府は条約加盟を否定し、締約国会議への代表派遣も見送ったが、福島さんは前を向く。「若者のひたむきさに勇気づけられた。私の身代わりとともに、きっと平和の尊さを伝えてきてくれる」

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