外国籍、生きづらさに向き合う 愛知の少年院 更生プログラム

2019年12月16日 16時00分

沼田好司教官(奥)と向かい合ってグループワークを振り返るブラジル国籍の少年=愛知県瀬戸市の瀬戸少年院で

 愛知県瀬戸市の瀬戸少年院が今年から、外国にルーツがある少年を対象にした独自のグループワークを始めた。国籍や文化の相違から背負ってきた「生きづらさ」に正面から向き合ってもらい、円滑な更生につなげる狙いがある。専門家は、外国籍の住民が多い東海地方の実情に即した先進的な取り組みとして評価する。 (斎藤雄介、武藤周吉)
 同院は主に愛知、岐阜、三重各県の計約七十人を収容しているが、うち一~二割は本人か親が外国籍の少年が占め、全国平均よりも高い割合という。
 グループワークは同院の沼田好司法務教官(36)が考案し、今夏に初めて実施した。自作のテキストを基に、日本での生活で感じてきた不満や孤立感を言葉にしてもらい、それぞれが自分の存在を肯定的に受け止めることができるよう導く。初回はブラジル国籍や母親がフィリピン出身などの六人が任意で参加し、九十分間の話し合いを二カ月で計十回行った。
 会話のテーマは「日本の好きなところ 嫌いなところ」「自分が日本人ではないと認識した瞬間」など。「日本風と色合いが違う弁当を学校で開けるのが恥ずかしかった」「母国では強い香水をつける文化があり、スーパーで他の客から避けられる」-。少年たちは悩みを打ち明け合った。
 沼田教官によると、少年たちが抱く違和感や疎外感は社会からはみ出す一因になることがあり、特別な教育プログラムの必要性を感じたという。今後も不定期に実施する予定で「自分を見つめ直して開示し、受け入れられた成功体験が、日本社会に溶け込む自信につながれば」と話す。
 同院の取り組みを調査する立教大の小長井賀與(かよ)特定課題研究員(司法福祉)によると、外国籍などの少年は親が日本社会に適応できないなどの理由で家庭に不安定さを抱えることが少なくなく、非行に走りやすい側面があるという。
 小長井研究員は、改正入管難民法施行による外国人労働者の受け入れ拡大で、今後さらに外国にルーツを持つ子が増えるとみる。「誰かに理解された経験は更生のきっかけになり得る」と評価した上で「外国人が日本になじめるよう『帰属場所』をつくる受け入れ策に、社会全体で取り組む必要がある」と指摘する。

◆「同じ思いの子の力に」悩み打ち明けたブラジル国籍少年

 瀬戸少年院に一年ほど入っていたブラジル国籍の少年(18)は、グループワークを通じてコンプレックスを見つめ直し、「同じ思いをしている人の力になりたい」と前を向く。
 作業着のような制服、少し伸びた丸刈りの黒髪。十一月、同院の面接室で向かい合った少年は、流暢(りゅうちょう)な日本語で生い立ちを語り始めた。生まれも育ちも日本。「見た目も日本人みたいでしょ」
 二十年以上前に来日した両親は小学生の頃に離婚。周囲が日本人ばかりの学校では、日系人特有の片仮名の姓名が目立って嫌だった。一方で家庭に戻ると、母や姉が話すポルトガル語がさっぱり分からない。
 自分は何者なのか。不安を紛らわすように地元の不良グループと付き合うようになった。無免許でバイクを乗り回し、すぐ周りにけんかをふっかける友達もいた。自身も恐喝などの容疑で二度逮捕された。
 グループには日本人も外国人もいた。それぞれが抱える家庭の事情には、触れないのが暗黙のルール。「楽といえば楽だった」。ただ、日本と母国の間で揺れる自分の心の奥底は、誰にも話したことがなかった。
 八月に同院で始まったグループワークでは、「生きづらさ」がテーマだった。徐々に誰ともなく口を開き始め、母親が本国で性犯罪の被害に遭ったことが来日のきっかけだったと明かした人もいた。少年もつられて話した。「日本人なのか、ブラジル人なのか、自分が中途半端な存在に思えた」。周囲の共感する声が聞こえた。
 「自分が外国人だというのが嫌じゃなくなりました」。そう話す少年は、取材に同席した沼田好司法務教官に照れながら言った。
 「俺も、先生と同じこと別の子にしてあげたい」

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