「いい話」裏にサクラ 移住相談会 外注企業動員

2019年12月16日 02時00分

移住相談会を運営する企業の資料。巨大な会員ネットワークをPRし、参加者が500人に満たない場合は「出展料は半額」と約束している=一部画像処理

 地方自治体が東京都内で開いている移住相談会。政府が後押しする事業だが、自治体が抱える地方創生関連の事務量は膨大で、多くの相談会が民間企業への外注で開かれていた。一部の企業が「サクラ」を動員する事態に陥った背景には、時間に追われ、やむなく民間に頼る自治体の事情がある。
 「移住促進に必死だった。何とかしたいと悩んでいた時、いい話だと飛びついた」。東北地方の自治体職員は語る。二〇一六年度に初めて企業の営業を受けた。相談会や移住体験ツアーで参加者を確約する内容に納得し、契約した。
 中部地方の自治体職員は、企業のPR資料に驚いた。都市部から過疎地域に移住する「地域おこし協力隊」の希望者約二千人、起業希望者約三十万人などの巨大な会員ネットワークが紹介されていた。「東京で名を売るチャンスだと思った」。同じ資料を受け取った東海地方の自治体職員も「集客への自信が伝わった。東京でのPRに苦労しなくていいと思った」と話す。
 「数字は喉から手が出るほどほしい。首長や議会に報告する体裁を整えたい」。東北地方の別の自治体職員も本音を漏らす。
 一方、企業への不信感とともに複雑な胸中も明かす。
 「必ず満足いく参加者を集める」。中部地方の別の自治体職員は強気な営業を覚えている。迎えた移住イベント当日。「四十ほどの自治体が集い、盛況だった。相談者が途切れなかった」。違和感に気づいたのは地元に戻ってからだ。「質問がなく、一方的な説明に終始した」
 回収したアンケートには住所が書かれていない。三十組のうち、メールアドレスの明記は二組だけで、うち一組は架空。「個人情報に慎重な時代とはいえ、移住に関心がある人たちだったと思えない」
 地方での就職支援に携わった東北地方の別の自治体職員は、本紙に「履歴書を持たずに来た女性が声を潜めて『実はアルバイトです』と打ち明けた。東京で正社員の仕事を探していると言っていた」と証言した。
 「移住に関心がないサクラは確実にいた。目を見て、すぐ分かった」。九州地方の自治体職員は断言する。それでも後悔はないという。「国の交付金を使う。移住はすぐに成果が出ないけど、相談者の数字はすぐに出る。都合が良かった」
 外注の中身は会場や参加者を確保する一部業務から、すべてお任せの「丸投げ」まで幅がある。本紙が情報公開請求した資料などによると、自治体が支払った外注費は年間で数百万円は珍しくなく、一千万円近くを支払っている例もある。
 地方創生を推進する内閣官房の担当者は「時間的にも人材的にも、すべて自前では難しい面がある。ただ、しっかりと見極め、適正な企業と契約してほしい」と話した。

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