女による女のための「R-18文学賞」が活況 書き手も選考委員も女性、社会の抑圧に鋭い目

2022年6月21日 15時33分
 今年で21回を数える公募の新人文学賞「女による女のためのR—18文学賞」(新潮社主催)は応募者も選ぶ側も全員女性という、異彩を放つ文学賞。LGBTQ(性的少数者)への配慮の高まりなど、性別にとらわれない多様な生き方への模索が続く中、あえて「女のため」をうたうのはなぜなのだろう。(飯田樹与)

第21回女による女のためのR-18文学賞で大賞を受賞した上村裕香さん(前列右)と友近賞の古池ねじさん(同左)。後方の3人は選考委員=東京都内で

 「私にとって最高に輝いている賞。それは、女性が選ぶ女性のための文学賞だったから」。5月下旬、都内であったR—18文学賞の贈呈式で、選考委員の作家柚木麻子さんはこう切り出した。応募作を「他の文学賞では取りこぼされたかもしれない才能に満ちていた。今まで日本の出版シーンでは見たことがない表現や絶望、社会への抑圧に向ける鋭い目があった」と講評し、「できたらこの賞でデビューしたかった」と絶賛した。
 R—18文学賞は2001年、新潮社の女性編集者たちによって創設された。応募の資格を「性自認が女性の人」に限定し、「性」をテーマにした小説を募集。「R—18」(成人向け)といっても読者も応募者も年齢に制限はない。今回の選考委員は柚木さんのほか、作家のくぼ美澄さんと漫画家の東村アキコさんだった。
 賞の創設当時は、女性の作家は増えつつあったが、「女が排除されるのは当たり前という認識」から女性の選考委員は圧倒的に少なかったと振り返るのは、設立に奔走した小林加津子さん。「女だけの場所を創るのはある意味、画期的だった」
 かつて官能小説は書くのも読むのも男性が大前提だったが、読んでみて衝撃を受けた。「レイプされているのに、気持ちよがっているとか。あまりにも男の身勝手な解釈で書かれているのに、すごく腹が立った」。女性の手で女性が読んでも楽しい官能小説をつくることを思い付いた。
 「性に関して書ける人は物語を書くのもうまい。実力のある人を見つける近道にもなる」。実際、第8回の大賞受賞者、窪さんは受賞作「ミクマリ」を含む連作短編集『ふがいない僕は空を見た』が山本周五郎賞に輝いた。11回目からは「性を語っていないけど、すごく良い作品もあった。より広く作品を募ろう」と、テーマの制限をなくしたが、第15回大賞の町田そのこさんはその後、『52ヘルツのクジラたち』で本屋大賞を受賞した。
 当初約300点だった応募点数は今回、約980点と過去最多に。ヤングケアラーの少女が主人公の上村かみむら裕香ゆたかさん「救われてんじゃねえよ」が大賞、古池ねじさん「いい人じゃない」がタレントの友近さんが選ぶ友近賞に輝いた。
 応募作の内容も変化してきた。当初、不倫の相手は年上の男性だったが、最近では同性や年下の男性が大半という。性暴力を告発する#MeTooやフラワーデモなど、ここ数年、女性の人権を巡る活動が活発となったためか、性被害をテーマにした作品も見られるようになった。小林さんは「この賞が、女性が声を上げることに少しは役に立っているのかな」と話す。
 今回、初めて同賞出身で選考委員になった窪さんは、「R—18文学賞の作品はフィット感が非常に強い。『分かる分かる』ってなる」と話す。受賞後、女性の生き方をテーマにした作品を発表する作家も多く、窪さんもその一人だ。「母や祖母がストレスやプレッシャーを感じながら家族を切り盛りしているのを見ている世代。そこからどういうふうに世の中が変わったのか、引いた目で見たいというのもある」と語る。
 「管理職や議員の男女比、家事などの無償労働時間の差など、女性と男性の不均衡は依然としてある」と窪さん。「その中で、女性だけの場を設けてあげるのは全然悪いことじゃないと思う」。小林さんも「20〜30年前は『男が上、女は下』が当たり前だったが、今は『そうじゃないじゃん』と正している過渡期。男女の不均衡があるうちは、この賞は必要でしょう」。

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