長男殺害、元次官懲役8年求刑 「痛ましい事件判断難しく」

2019年12月14日 02時00分
 東京都練馬区の自宅で六月、同居の長男を刺殺したとして、殺人罪に問われた元農林水産事務次官、熊沢英昭被告(76)の裁判員裁判が十三日、東京地裁で結審した。検察側は懲役八年を求刑し、弁護側は執行猶予付き判決を求めた。判決は十六日。
 検察側は論告で、一人暮らしをしていた長男の英一郎さん=当時(44)=が実家に戻った翌日の五月二十六日、熊沢被告に暴行したことで殺害を考えるようになったと指摘。「被告は強い殺意に基づき、一方的に攻撃を加えており、犯行は悪質だ」と非難した。
 英一郎さんの暴力の背景には発達障害があるとし、「さまざまな事情がある悲しい事件」と述べる一方、「被害者の主治医や警察などに相談しておらず、殺害以外の選択肢がないほど切迫していたとは考えにくい」と指摘し、実刑が相当とした。
 弁護側は最終弁論で「暴行を受けた後も、英一郎さんが一人暮らしを再開できるよう準備していた」と計画性をあらためて否定。事件当日も「『殺すぞ』と言われ、台所の包丁をつかみ、とっさに刺した」と主張した。
 また、障害のある子の将来を悲観した殺人事件などでは、三割が執行猶予付き判決を言い渡されていると説明し、「英一郎さんの就学や就業を助け、長年にわたって献身的に支えてきた。身体拘束は妥当ではない」と執行猶予を求めた。
 最後に意見を求められた熊沢被告は「罪の重大さは自覚しています。亡き息子のために毎日祈り続ける」と述べたが、英一郎さんへの謝罪の言葉はなかった。
 元刑事裁判官の水野智幸・法政大法科大学院教授(刑法)は「やむにやまれぬ事情がどれだけ認められるかが判決の焦点。家庭内暴力のひどさや回避策をどれだけ講じたかが考慮されるだろう」とみる。ある現役裁判官は「痛ましい事件で、裁判員は難しい判断を迫られるはずだ」と話した。
 起訴状によると、熊沢被告は六月一日、自宅で英一郎さんの首などを包丁で多数回刺し、失血死させたとされる。 (小野沢健太、山下葉月)

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