<社説>「じぶん争点」のすすめ  参院選きょう公示

2022年6月22日 06時52分
 参院選はきょう公示され、七月十日の投開票に向けて選挙戦に突入します。昨年十月発足の岸田文雄内閣に、私たち有権者が中間評価を下す機会です。
 十八日間の選挙期間中、政党や候補者の公約や政策、訴えなどを吟味して貴重な票を投じたい。
 とは言うものの、何を基準に投票先を決めればいいか分からないとの声を選挙のたびに聞きます。分からないから投票しない、投票しても何も変わらない、と考える人が多いのかもしれません。
 それは近年の国政選挙での投票率にも表れています。
 二〇二一年十月の前回衆院選で小選挙区は55・93%、一九年の前回参院選の選挙区は48・80%にとどまっています。以前は70%を超えることも多かったので、近年下落傾向にあることは確かです。
 国民の代表である国会議員を選ぶ選挙に、主権者の半数しか参加していないのは、やはり民主主義のあるべき姿ではありません。

◆民主主義の深刻な危機

 東京大学社会科学研究所の宇野重規教授は本紙のインタビューに「国民が政治に参加していないことが、最も深刻な危機です。国民の半分しか投票しない選挙で、民主主義が実現できていると言えるでしょうか」と指摘します。
 そして、その背景を「自分の一票が、政治を変えるという実感を持てないことが関係していると思います」と分析します。
 政党・候補者の公約や政策は幅広い分野を網羅していますから、分量が多かったり多岐にわたったりして、その比較が手間のかかる作業であることは分かります。
 でも棄権は白紙委任と同じ。自由民権運動、普通選挙運動、女性参政権運動などで先人たちが勝ち取った貴重な選挙権を放棄することになりかねません。そんなときおすすめの方法があります。
 すべての公約や政策に同意する必要はありませんので、自分が重視する政策に絞って、考え方が近い、期待できる政策を掲げる政党や候補者に投票する方法です。
 誠に勝手ながら「じぶん争点」と名付けてみました。福沢諭吉翁の「学問のすすめ」にならい「じぶん争点」のすすめ、です。
 例えば、私たちの日々の暮らしの中で今、最も心配が募るのは物価高に関わる問題でしょう。
 ロシアのウクライナ侵攻が昨年来の原油高に拍車をかけ、急激な円安も加わり物価や光熱費が上昇し、暮らしを直撃しています。
 その一方、賃金は上がらず、年金も減額されているので、暮らしの厳しさはより増しています。
 共同通信の全国電話世論調査では、参院選で投票先を決める際、物価高騰を「考慮する」と答えた人は71%に達します。これも立派な「じぶん争点」になります。
 物価高に焦点を絞り、政府の対策を妥当と考えるなら与党やその候補者に、そうでなければ、野党の中で自分の考えに近く、期待できそうな対策を掲げる政党や候補者に投票すればいいのです。
 賃上げや年金などの社会保障で選択するのも一案です。子育てや働き方など暮らしの問題は「じぶん争点」にあふれています。
 また暮らしを破壊する最たるものは戦争ですから、外交や安全保障に焦点を絞るのも手です。
 自民党は防衛費の年間十兆円への倍増を掲げますが、逆に不安定にならないか、消費税約2%分に当たる五兆円の増額分をどう確保するのか、暮らしが圧迫されないのか、など疑問は尽きません。
 よく吟味して真に平和を守る外交・安保政策に票を託したい。
 大切なことは自分で投票先を決め、実際に投票することです。

◆「投票は弾丸より強い」

 第十六代米大統領エーブラハム・リンカーンは「投票は弾丸より強い」との名言を残しました。
 何も変わらないからと棄権したり、深く考えずに投票する「お任せ民主主義」では暮らしはよくなりません。投票に行くほんの少しの手間と勇気の積み重ねが、政治を少しずつでも変えるのです。
 十九日投票の東京都杉並区長選では現職が敗れ、同区初の女性区長が誕生しました。投票率が前回比5ポイント以上上昇したことも変革を起こした要因の一つでしょう。
 もちろん投票に行って終わりではありません。政治権力は暴走の危険がありますから国民による不断の監視が必要です。「じぶん争点」の発見が政治への諦めをなくし、暮らしを少しでもよくする機会になれば、と切に願います。

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