「ロシア正教会は戦争に反対すべき」在米ウクライナ正教会の神父の嘆き 人道センター立ち上げ母国へ支援

2022年6月22日 17時00分

インタビューに答えるステリアック神父=いずれも4月下旬、米東部メリーランド州で、吉田通夫撮影

 ロシアによるウクライナ侵攻を受け、米東部メリーランド州にある聖アンドリュー・ウクライナ正教会大聖堂は「人道センター」を立ち上げ、同国への大規模な支援活動を始めた。ウォロディミル・ステリアック神父(47)は「神職に就いて27年でさまざまなことを見聞きしてきたが、今回の侵攻は受け入れがたく、本当につらい」と語り、侵攻を容認するロシア正教会を批判した。(ワシントン・吉田通夫)

◆24時間扉を開け放ち…祈り、行動

 ステリアック氏はウクライナ出身で、1997年に渡米し2001年から大聖堂に勤める。信徒にもウクライナからの移民が多く、ロシアによる侵攻開始直後は「砲弾が落ちてきている所にいる知り合いに電話して、助けようと思っても何もできず、みんな混乱していた」と振り返る。祈りをささげに足を運ぶ人が後を絶たず、ドアは24時間開け放ち、寝る間を惜しんで対応してきた。

支援物資を積んでウクライナへの発送を待つコンテナ

 食品や衣類、日用品などを持ち寄る人も多く、ウクライナに送ろうと箱に詰め始めた。現金の寄付も多く、ドアに山のように花束が積まれていたこともある。教会内に「人道センター」を立ち上げて組織的に対応し始め、4月には集まった寄付金で救急車4台を購入し輸送。バイデン大統領から同24日付で「並外れた団結と決意に感謝をささげる」との手紙も届いた。
 教会には今もボランティアが常駐し、昼夜を問わず届く物品を整理し梱包こんぽうしている。企業からの大規模な寄付も増え、医薬品や救急セットなどさまざまな物資がやってくる。5月上旬までに、大型コンテナで15個分、重さにして200トン分の物資を発送。ウクライナ国内の信徒たちから、交流サイト(SNS)を通じて到着と感謝の知らせが届く。

インタビューに答えるステリアック神父

 「私は侵攻により人間の最悪の部分を見たが、同時に最高の部分も見た」と、ウクライナ支援のために人々が「団結できた」と希望をつなぐ。

◆プーチン氏と親しい総主教が侵攻を擁護

 しかし、ロシアによる侵攻は、許す気持ちになれない。
 ステリアック氏は米空軍付の神父も務めており、戦争が起きることは理解し「自国民や自国の軍隊のために祈るという文脈があることも分かる」と言う。だが、ロシア軍はウクライナの首都キーウ(キエフ)近郊ブチャで多くの市民を虐殺したり女性を暴行したりするなど数々の暴虐が疑われており「単なる戦争ではなく、極悪非道な侵略だ」と強調した。

ロシア正教会のキリル総主教(AP)

 怒りは、侵攻を擁護したロシア正教会にも向く。同正教会トップのキリル総主教はプーチン・ロシア大統領と親しく、ウクライナへの侵攻を支持。AFP通信によると、侵攻開始後に「国内外の敵」と戦うため結集するよう信徒に呼びかけたという。このため、ウクライナ正教会との対立は深まっている。
 「これはキリスト教が目指すものではない。ロシア正教会の幹部たちは、本当にキリスト教の指導者なのか」。教区や大聖堂の維持管理を担う評議会のタマラ・ウォロビー議長(65)は憤りを隠さない。「宗教指導者は模範を示すべきで、ロシア正教会のリーダーたちは戦争に反対すべきだ」
 ステリアック氏は「本来、一つ一つの命は非常に貴重で価値がある」と説き、「ロシアの指導層の考え方は数百年遅れていて、命に価値がないと考える野蛮な時代にいる」と批判した。

 ウクライナ正教会 「正教会」はキリスト教の宗派のひとつ。西欧や米大陸に普及したカトリック教会やプロテスタント教会に対し、ギリシャや東欧などに普及し「東方正教会」とも呼ばれる。ロシアなど各国や地域に組織を持ち、ウクライナ正教会はそのひとつ。同正教会の中にはロシア正教会とつながりのある組織もあったが、侵攻開始後に絶縁を宣言した。


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