セクハラ行為拒否した女性の顔踏み付け暴行…性差別への嘆き広がるも、中国当局は抑え込み

2022年6月22日 17時00分
10日未明、中国河北省唐山市の串焼き店の外で、暴行されて路上に倒れ込む女性ら=微博から

10日未明、中国河北省唐山市の串焼き店の外で、暴行されて路上に倒れ込む女性ら=微博から

<デスクの眼・中澤穣>
 中国河北省唐山市の飲食店で、体格のいい複数の男たちが、店内に居合わせた女性たちに執拗しつように暴行を繰り返す映像が、同国のインターネット上で話題になった。事件発生から10日以上が過ぎても、単なる暴力事件の枠を超えて波紋が広がっている。
 ネット上で拡散した映像は、同市の串焼き店に設置された防犯カメラで撮影されたとみられる。すでに日付が変わった10日未明の店内で、会計を終えたとみられる男たちが入り口付近の女性グループに近づき、その1人の背中を触る。女性に拒否されると、男は突然、女性たちを殴り始めた。
 さらに女性の髪をつかんで店外に引きずり出し、男の仲間も加わって倒れ込んだ複数の女性の顔を踏みつけるなど暴行が続いた。中国メディアによると、女性4人が負傷し、うち重傷の2人は集中治療室(ICU)に運び込まれた。
 警察の対応は早かった。発生翌日には、事件に関与した男女9人を逮捕した。一部は、中国で「黒社会」と呼ばれる反社会的組織とつながりがあるとみられる。中国では特に地方都市で、なおも黒社会が幅を利かせる。ネット上では黒社会と警察との癒着を指摘し、警察の取り締まりが甘いという批判が高まった。
 当局の素早い対応には、批判の火の粉を振り払う意図がある。同市が13日に治安改善のための特別キャンペーンを行うと発表すると、多数の女性らが同様の被害を訴えようと警察に押しかけた。同日には、中国最高人民検察院(最高検)が「深刻な暴力や黒社会に関わる犯罪など、民衆の安全感に影響する犯罪」を取り締まるよう指示した。
 しかしそれでも沈静化しないのは、事件には女性に対する差別問題という側面があるためだ。
 中国の女性活動家は女性に対する「構造的な差別」があると指摘し、「セクハラ的な行動が拒絶され、男が激高したことが事件のきっかけであり、女性の拒絶を侮辱と受け止める男の心理が根底にある」と訴える。ネット上では「女性にとって安全な場所は中国にはない」などと女性への暴力が後を絶たない現状への嘆きも目立った。
 一方で当局には女性差別に関わる問題ではなく、単なる暴行事件として処理したい意図も透ける。事件と女性差別を結び付ける書き込みなどはネット上から削除されている。中国の交流サイト(SNS)微博ウェイボでは11日、事件に関連して「男女間の対立をあおった」として265アカウントが閉鎖などの処分を受けた。
 中国ではここ数年、女性差別が背後にある事件がネット上で話題となり、当局がそれを抑え込むという出来事が相次いでいる。当局は、自身の見解と異なる声が社会的な影響力を持つことを警戒する。
 当局の弾圧によって人権や自由を訴える活動がほぼ壊滅状態にある一方、構造的な差別に反発する女性の声は抑え込むことが難しい。今後も同様の出来事が続きそうだ。

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