芝居の役割 問い直す こまつ座「紙屋町さくらホテル」 劇場は「現実を超えてつながる場所」

2022年6月23日 07時18分

こまつ座「紙屋町さくらホテル」の一場面=2017年、東京都西東京市・保谷こもれびホール、一澤洋平撮影

 戦時下にあっても芝居を心から愛した人たちの演劇賛歌、こまつ座公演「紙屋町さくらホテル」(井上ひさし作)が、七月三日から東京・新宿の紀伊国屋サザンシアターTAKASHIMAYAで上演される。ロシアによるウクライナ侵攻がやまない現在。演出の鵜山仁は「芝居の役割を問い直す貴重な機会」ととらえる。 (山岸利行)
 「紙屋町−」は一九四五(昭和二十)年五月、原爆投下前の広島が舞台。戦地を慰問する移動演劇隊「さくら隊」が投宿するホテルで物語が繰り広げられる。プロの俳優やホテルオーナー、言語学者らに加え、海軍大将、特別高等警察まで巻き込んで稽古が進み、演劇の面白さ、魅力に目覚めていくが、現実の戦況は厳しいままで…。
 九七年、東京・初台の新国立劇場のこけら落としで初演。繰り返し上演されており、鵜山は二〇〇三年以降、何度も演出を担当している。

こまつ座公演「紙屋町さくらホテル」について話す演出家の鵜山仁

 「甲子園の高校野球は永遠だと思っていたが、コロナで中止となった。インパクトが強く、自分の知っている世界がいかに狭隘(きょうあい)なものかと思った。少なくとも舞台の上では視野を広げてみようと思う」
 劇中、米軍のB29爆撃機の爆音が響く中でも、さくら隊の面々は芝居の稽古を続ける。やがて、人間一人の力ではなし得ない大切な何かを感じるようになっていく。
 「芝居に何ができるのか。芝居が実生活にどういう影響を及ぼすのか。その可能性と限界についてよく書かれていると思う」。戦争を見つめ続けた井上の演劇への愛情が詰まった作品をそう評価する。
 七十七年前、広島、長崎に原爆が投下された。その後も世界で争いは絶えず、今また、ウクライナでの戦闘が長期化の様相を見せている。「歴史は繰り返す。明日はわが身」の状況で、「井上さんが書かれた作品をどういう表情、声、音などで表現するか」に腐心するが、初演から二十五年で多くの俳優陣が演じてきた「ライブの積み重ねの説得力」を信じている。
 劇場は「現実を超えてつながる場所」という。「人間の可能性やリスクについて知見で突き詰めることで次の侵略をいくばくか遅らせることができたら」と芝居の役割に期待する。
 公演は七月十八日まで。出演は七瀬なつみ、高橋和也、千葉哲也ら。問い合わせは、こまつ座=(電)03・3862・5941。

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