バドミントン男子・西本拳太、パリ五輪出場の夢追う 名門を退社、練習環境を見直し「自信」つかむ

2022年6月23日 11時40分

トマス杯準決勝のインドネシア戦でプレーする男子シングルスの西本拳太=5月13日、バンコクで(共同)

 世界を相手に気後れしていた姿はもうない。バドミントン男子の西本拳太(27)=ジェイテクト=は、5月にバンコクであった国・地域別対抗戦のトマス杯で4戦4勝し、日本の銅メダル獲得に貢献した。安定が約束された競技環境を離れて甘えを断ち、精神的な弱さを克服。「気持ちもプレーも、自分史上で一番良い状態」と自信をみなぎらせ、パリ五輪出場の夢を追う。
 準決勝の強豪インドネシア戦。日本が1試合目のシングルスと2試合目のダブルスを落とし、後がなくなった3試合目のシングルス。世界ランキング8位の格上を相手に、コートに入った。以前なら勢いにのまれていたかもしれない。でも、この日は「たぶん勝てるという自信があった」。厳しいコースへのショットに飛び付き、隙を突いて強烈なスマッシュを打ち込んだ。2—0のストレート勝ち。他の選手が敗れて日本の決勝進出はならなかったものの、「修業が結果につながった」と収穫を持ち帰った。

◆五輪って出るだけじゃだめ

 中大時代に学生日本一に3度輝くなど将来を嘱望され、2017年に実業団の名門、トナミ運輸に入った。勢いに乗り、18年には世界ランキング9位に。だが、そこから伸び悩む。国際大会では、「この試合に負けたらナショナルチームから外れるかもしれない」などと萎縮し、結果がついてこない。与えられた環境で、知らず知らずのうちに漫然とトレーニングをしているからではないか—。
 「変わりたい」
 20年春、トナミ運輸を退社。収入もなくなった。つてを頼り、岐阜を拠点とする女子ダブルス東京五輪代表の福島由紀、広田彩花組のチームに交じって鍛錬した。後ろ盾のない環境に自分を追い込み、トレーニングへの意識も変えたかった。「こういう場面が試合で来たらどうしようとか、この接戦の状況ならこうした方がいいかなとか考えるようになった」
 練習に裏付けされた自信があるから、本番も動じず、勝負どころで守りに入ることもなくなった。持ち味である180センチの長身から繰り出す強烈なスマッシュがさえる。「やるだけやって負けたらしょうがない」と開き直った。
 約2年の「修業」を経て、今春、ジェイテクトに入社した。本社がある愛知県刈谷市の体育館で、バドミントン漬けの毎日だ。恵まれた環境で競技に専念できるありがたみを、改めて感じる。
 五輪出場は小学生からの夢。東京はあと一歩で逃した。外から眺めた大舞台。メダルラッシュが期待された日本は、混合ダブルスの銅メダル一つにとどまった。「すごい騒がれていたのに、いきなり静まりかえった。五輪って出るだけじゃだめで、メダルを取らないと何も変わらないんだな」と刺激を受けた。
 パリ五輪まで2年。世界ランキングは20位。2位桃田賢斗(NTT東日本)、14位常山幹太(トナミ運輸)に続く日本勢3番手につける。手応えをつかんだトマス杯から、さらに飛躍できるか。海外転戦を重ね、8月に東京で世界選手権に挑む。「紙一重の試合をものにできるように戦術面も磨きたい」。自信を胸に、パリへの道を行く。(兼村優希)

 にしもと・けんた 8歳から競技を始める。埼玉栄高から中大に進学し、2013年から全日本学生選手権シングルス3連覇。16年の全日本総合で初優勝。トナミ運輸、岐阜県バドミントン協会を経て、22年4月からジェイテクト。三重県伊勢市出身。

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