「額ありき」農業対策費 「強化」掲げ、ばらまき

2019年11月26日 02時00分

ウルグアイ・ラウンドの農業対策費を投じて造られた童話の森ギャラリー=2015年、長野県信濃町で

 政府は大型の経済連携協定を結ぶたびに、国内農業の対策費を予算計上してきた。過去には巨額の予算を使いながら農業強化につながらずに「ばらまき」と批判を浴びたケースもあり、与党による選挙目当ての狙いが透けて見える。 (吉田通夫、皆川剛)
 「かつての反省もあり、額ありきで決めているわけではない」。農林水産省の担当者は、環太平洋連携協定(TPP)などの農業対策費について、こう語る。
 「かつての反省」とは、一九九三年に合意した関税貿易一般協定(ガット)のウルグアイ・ラウンドを指す。日本は、保護するべき分野と位置付けたコメの部分的な開放や農産品の関税引き下げを迫られた。与党は選挙への影響に危機感を強め「一年で一兆円の対策費」の大合唱。事業費は八年間で六兆円超に膨らんだ。「額ありき」で積み上げた膨大なカネは行き場を失い、農業とは関係ない温泉施設やギャラリーの建設など公共事業に使われ、農業強化にはつながらなかった。
 当時の対策づくりを担った谷津義男元農相は二〇一五年に、TPPでの農業対策を話し合った自民党の会合に出席し、「この二の舞いをやってはいけない」と反省してみせた。しかし今回も、毎年度、判で押したように三千億円超の対策費を計上。農水省は「後年に無駄だったと言われることがないよう、効果がない事業は取りやめる」(担当者)と言うが、一五年度から始まった対策で終わったものはない。
 江藤拓農相は九月十一日の就任会見で、日米貿易協定案がTPPの範囲内に収まったのに追加対策を講じる妥当性を問われ、「財務省に(対策は十分やっていると)指摘されても、農林水産行政に使えるお金はできるだけ確保したい」と踏み込んだ。農業の強化という具体像のない目標に向け、終わりの見えない対策費が計上され続ける。

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