生活保護ケースワーカーの業務負担が深刻化 利用増加で、仕事は増えても職員は増えず

2022年6月24日 08時00分
 生活保護利用者に対応する自治体のケースワーカーの業務負担増が深刻化している。利用者は200万人超の高水準が続き、新型コロナウイルス禍もあって、今月1日の国の集計(速報値)では、2021年度の保護申請件数は2年連続で増加し約23万件。ケースワーカーの充足率は低下傾向が続き、対応内容が利用者の高齢化で複雑化していることもあり、業務負担は限界にきている。7月10日投開票の参院選でも、各党などの体制整備への姿勢が問われる。(太田理英子)
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 「日中は利用者や関係先からの電話、窓口対応が次々に入り、それだけで一日が終わることも。事務作業のための残業は多い」。東京都内の自治体で勤務するベテランケースワーカーの女性職員はため息をつく。約90世帯を担当し、国が目安とする80世帯を上回る。
 厚生労働省によると、08年のリーマン・ショック以降、全国の生活保護利用者は200万人超えが続く。コロナ禍の影響もあり、21年度の申請件数は前年度比0.8%増の22万9878件。世帯別では高齢世帯が年々増え、22年3月時点で全体の55%の91万世帯。その9割超は単身世帯だ。
 ケースワーカーの仕事は生活状況を聞き取って援助方針を決めるほか、病院など関係機関との調整など多岐にわたる。「暮らしの様子を知り、本音を聞き出す重要な機会」として家庭訪問も欠かせない。

デスクワークをする生活保護ケースワーカー=東京都内で

 だが、この女性職員は「一日に5〜6件の訪問がやっと。職場に戻ってからたまっている電話対応や事務作業をさばかないといけない」と明かす。最近は認知症の人も増え、光熱費の支払いなど金銭トラブルの対応や介護保険などに絡む事務作業も多いという。
 仕事は増えているのに、職員は増えない。ほとんどの自治体が財政面から人員増に二の足を踏んでいる。厚労省の補助事業で行われた民間調査によると、ケースワーカーの「充足率」は05年度以降に全国で100%を切り始め、20年度は93%に低下した。
 今後、コロナ対策で行われている生活支援金の貸付制度などが終了した場合に「新規の保護申請が増える可能性がある」(厚労省担当者)とされ、利用者増でさらに充足率が悪化する懸念も出ている。

◆外部委託に根強い慎重論

 生活保護業務の負担軽減策として、検討されているのが業務の外部委託だ。一部は始まっており、どこまで範囲を拡大するかが焦点だが、慎重論も強い。
 厚生労働省は昨年3月、書類発送の事務作業など「明らかに公権力の行使(保護決定など)に当たらない業務」ならば委託が可能とする事務連絡を出した。
 今年3月には厚労省の補助事業で設置された「生活保護業務の負担軽減に関する研究会」(有識者や自治体職員で構成)が報告書をまとめ、委託範囲の一部拡大が可能との考え方を提示。「申請窓口での初期対応」などの委託は避けるべきだが、「自立に向けた助言・支援の業務」や専門機関と連携しての「利用者宅への定期訪問」は対象になり得るとした。
 報告を受けて厚労省も拡大の検討を開始。ただ自治体には温度差も。居宅介護支援などを民間委託する東京都葛飾区は「負担が減り、専門性のある対応が効率的にできるようになった。全てをケースワーカーが担う時代ではない」と前向き。一方、目黒区は「個人情報保護の問題もある」と慎重だ。
 全国のケースワーカーらでつくる全国公的扶助研究会の中村健事務局次長は「定期訪問は実態を把握して給付の程度を決める重要業務」と指摘。「最後のセーフティーネットの生活保護業務は公的責任で行うべきで、正規職員の確保こそ必要」と訴える。
 東洋大の木村正人教授(社会学)も「外部委託は外注を進めて公務員や社会保障を減らしていく発想」と疑問視し、「福祉の需要があるからこそ、専門職としてのケースワーカーを増やすべきだ」と話す。(太田理英子、山下葉月)

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