<参院選・ここに注目>答えは手元の財布に 経済部長・斉場保伸

2022年6月24日 06時00分
 「強制貯蓄」という聞き慣れない言葉が突如登場し、この種の貯蓄が増えているから家計は物価高を許容できる、と物価安定の最高責任者に言われてしまったことは、衝撃だった。今月6日の黒田東彦はるひこ日銀総裁の発言である。黒田氏は後日撤回した。
 コロナ禍の行動制限で会食やレジャーに出られず、消費に回らなかったお金だから「強制」だそうだ。民間シンクタンクの専門家に聞くと「これは日銀用語ですよ」と言う。
 日銀の試算では、2021年末時点で強制貯蓄は実に50兆円。ざっくりと国民1人に計算すれば約40万円となる。3人家族なら約120万円。これが新たにたまったことになる、という。
 「いやいや、そんな貯金どこにもない」と思った人は多いだろう。手元の財布の中身がその答えだ。日銀によると、この貯蓄は年収800万円以上の高収入世帯にほぼ半分がある。総裁には、比較的暮らしに余裕がある層しか目に入っていなかったのだろうか。
 全国消費者団体連絡会の三谷和央かずひろ事務局次長は「飲食店など、コロナ禍で収入が減った人は大勢いる。毎日ぎりぎりの生活をしている人にとって、物価高は日に日に厳しくなっている」と指摘する。「置き去りにされている」という思いが、反発の根源にあるかもしれない。
 よく分からない言葉が出てきたときは要注意だ。たとえ貯蓄が増えたとしても、貯蓄は自主的に、目的を持って行うもの。「強制」と名付けた上に、勝手に使い道まで決められてはたまらない。急激な物価高に備えようと貯蓄した人がどれほどいただろうか。
 この参院選で最大の焦点となった物価高。候補者の言葉は私を置き去りにしていないか。注意深く耳を傾けたい。

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