シモキタ線路街に緑モ来タ 住民主体の「園藝部」 街の植物守り育てる

2022年6月24日 07時07分

下北線路街の広場で緑を手入れする「シモキタ園藝部」のメンバーら=いずれも世田谷区で

 「まちの緑は自分たちの手で」−。下北沢駅(東京都世田谷区)周辺の小田急線の線路跡地1.7キロに先月下旬、「下北線路街(せんろがい)」が全面開業した。住民の意見を取り入れてデザインされた、この街で、住民たちが設立した一般社団法人「シモキタ園藝部」が、あちこちで緑を楽しめるように植物を育て、守っている。
 駅南西口を出て徒歩二分。ミニシアターやカフェが入る複合ビルの足元に、世田谷区と小田急電鉄が共同で整備する緑の広場「ののはら」が見えてくる。雨にしっとりとぬれた青や紫、白のかれんな花々。数人の「部員」が雑草を取り除いていた。

関橋知己代表理事

 その様子を見つめる園藝部の代表理事、関橋知己(ともみ)さんは「活動はほぼ毎日、来られる人が数人で、教え合いながらやっています」とほほ笑んだ。二〇二〇年三月の発足以降、部員は約百人まで増え、線路街を中心に、北沢、代沢、代田地区で活動している。
 園藝部の拠点「ののこや」は四月にオープンしたばかり。広場の向かいにあり、植物を手入れする一方、その過程で発生した枝や落ち葉などを生かしたワークショップを行う。

活動拠点「ののこや」で話し合う「シモキタ園藝部」のメンバーら

 シモキタ名物・古着屋にちなんだ「古樹屋(ふるぎや)」も展開。各家庭で育てていたが、もてあましてしまった植物を引き取り、鉢を植え替えるなど手入れして販売。値段はお客さんが決めるそうだ。
 ののこやに隣接するお店「ののちゃや」では、地域で採れたハーブティーを楽しめたり、下北沢産のはちみつ「シモキタハニー」も購入できたりする。養蜂担当の杉山直子さんは「線路街で生まれた緑から蜜を採取している。まちの緑は農薬を使わず、ミツバチの環境にもとてもよいです」と紹介する。

「シモキタハニー」。下北沢では養蜂も始まっている

 まちの緑を、植える、育てる、活(い)かす、還(かえ)す−。こうした園藝部の前身となったのは、世田谷区が一六年から始めた「北沢PR戦略会議」の緑部会だ。線路の地下化に伴い、上部利用やまちの魅力アップを住民同士で話し合う場だったが、当初行政側から出された計画案について、代表理事の一人、柏雅弘さんは「緑がそれほど入っていないように思え、緑不毛の下北沢を変えたいと思った」と振り返る。
 緑を増やしたい。住民同士が議論を重ねていくと、区も熱心に意見を聞いた。そして一七年からは事業者の小田急電鉄も参加。そして一九年に提案された新たな計画には、緑を介して人と人をつなげたいという住民の願いを受け、「街の雑木林」が盛り込まれた。「緑はまちの共有物」という思いが、事業者、行政、住民の三者でつながった瞬間だったという。
 こうして、事業者と行政でののはらを整備し、植栽管理は事業者の子会社ではなく、住民主体の園藝部に託された。
 関橋さんは「いろんな垣根を越えて仲間意識が生まれた。任せてもらった分、ファッション、音楽だけではなく、緑のまち・シモキタという一面も発信していきたいです」と話した。
 園藝部は、地元住民ではなくとも誰でも参加できる。活動日やイベント、入部方法などは「シモキタ園藝部」で検索を。
 文・山下葉月/写真・芹沢純生
 ◆紙面へのご意見、ご要望は「t-hatsu@tokyo-np.co.jp」へメールでお願いします。

関連キーワード


おすすめ情報

TOKYO発の新着

記事一覧