GDP600兆円公約「言いっ放しは困る」 自民に見えぬ6年前の検証 野党も多い「意気込み」政策<参院選2022>

2022年6月25日 06時00分
 7月10日投開票の参院選で改選となるのは、6年前の2016年に当選した議員たちだ。政権を担い続ける自民党は当時の安倍晋三首相が打ち出していた「新3本の矢」を公約に掲げていたが、「名目GDP(国内総生産)600兆円」などは未達成だ。自民が今回発表した公約に、その検証はなく、新たな目標値設定にも消極姿勢が目立つ。(福岡範行、岩田仲弘)

◆新3本の矢、達成と言い難く

 新3本の矢は、GDP600兆円、希望出生率1.8、介護離職ゼロの3つ。このうちGDPは21年度に542兆円、厚生労働省の雇用動向調査によると、介護・看護による離職は20年時点で7万人を超えており、介護離職ゼロも達成したとは言いがたい。
 希望出生率1.8は子どもを望む国民の希望がかなった状態を指し、統計による直接的な評価は困難だった。ただ、女性が生涯で生む子どもの数に相当する合計特殊出生率は21年に1.3。6年連続で下落しており、少子化の歯止めはかかっていない。
 農林水産物の輸出額1兆円は目標時期には遅れながらも達成した。しかし、「最低賃金1000円」は達成できず、新3本の矢の数値目標とともに、今回の参院選公約には載らなかった。

◆コロナだけで説明は「苦しい」

 自民党の高市早苗政調会長は16日の記者会見で、GDPについて「六年前と今年では経済状況に大きな変化がある。新型コロナウイルスの感染拡大とともに伸びが止まっている」と説明。「アベノミクスの成果により名目GDPが19年度には557兆円に伸びた」とも強調した。
 これに対してニッセイ基礎研究所の上野剛志氏は「新型コロナの影響は確かにあるだろうが、16~19年度の伸びを見てもコロナだけを理由にするのは根拠が薄く、苦しい」と指摘。「政権与党が言いっ放しでは困る。あらためて検証して、引き続き600兆円を目標にするのか、新たな目標を再設定するのか、明確にすべきだ」と提言する。

◆マニフェスト「看板倒れ」の反動で

 公約に数値目標や期限を明記した代表例は、09年の衆院選で政権交代を実現した旧民主党の「マニフェスト(政権公約)」だ。しかし、子ども手当で月2万6000円の満額支給が実現しないなど「看板倒れ」と批判され、公約にない消費税増税は反発を招いた。
 その反動で、今は与野党を通じて「強化します」「推進します」といった抽象的な公約が多い。交流サイト(SNS)では「『意気込み』くらいに考えている」との声もある。
 しかし、目標値や期限がなければ、各党が目指す国家の将来像はあいまいになり、公約の達成状況の客観的な検証も難しくなる。
 早稲田大マニフェスト研究所の中村健事務局長は、参院選は衆院選と違い、政権交代に直接結びつかない一方、公約の進み具合を振り返る「中間選挙」と位置付ける。その上で、自民党に「(6年前の数値目標という)検証材料があるのだから、それを提示するのは国民に対する説明責任でもある」と注文。
 野党には、自民党が最低賃金の数値目標を示さない中、一部の党が「1500円」を掲げていることを例に「それがどうやったら実現可能か、与党が打ち出せないところまで戦略を出すべきだ」と求めた。

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