「物価の優等生」を返上したい? もやし生産者、コスト増でも値上げに苦労 他の「優等生」たちは今 <くらし直撃~2022参院選>

2022年6月25日 06時00分
 総務省が24日発表した5月の全国消費者物価指数は、4月に続き前年同月比2.1%上昇と高い伸び率となった。原材料高や円安などを背景に幅広くものの値段が上がる中、長年価格が安定し「物価の優等生」と言われてきた商品も値上げに動き始めている。

◆緑豆は1カ月600万円アップ、燃料費は前年比1.5倍以上

洗浄前のもやしを確認する旭物産の林正二社長。この後、選別や洗浄、パック詰めなどを経て出荷される=23日、茨城県小美玉市で(木口慎子撮影)

 「物価の優等生という褒め言葉が、今は足かせ」。もやしを生産する旭物産(水戸市)の林正二社長は嘆いた。茨城県小美玉おみたま市にある同社のもやし工場では、24時間稼働で、1日平均40トンを生産する。
 この工場では、もやしの原料となる中国産緑豆の輸入価格が、ここ数年で5割を上回る上昇。中国で作付面積が減少したことや人件費の上昇、2年連続の天候不順があったためだ。さらに今年に入り、資源価格の高騰と円安が追い打ちをかけ、1カ月あたりの緑豆の仕入れ価格は前年比600万円超の増加となる見込み。燃料費は2021年度上半期と比べ22年度上半期は1.5倍以上になりそうだ。
 機械化などでコスト削減を進めてきた同社だが今年2月、「自助努力ではもう限界」と、食品スーパーなど取引先に価格改定を申し入れた。200グラム当たり2円程度の値上げ。交渉の結果、8割の取引先が受け入れてくれた。ただ、この値上げは緑豆の価格上昇に相当する分のみ。燃料費などは反映させられていない。資源高や円安が続けば、再度の値上げ交渉もせざるを得ない。店頭価格は現在30円ほどだが、「希望は40円ぐらい」と明かす。
 値上げがかないづらい背景にあるのは消費者側の期待で、一部スーパーが値上げを見送っているために生産者が負担をかぶることになっている。林さんは「デフレ経済の中、スーパーから『あと1円、あと50銭』と値下げを頼まれ、われわれは努力を続けた」と話す。貿易統計によると、過去30年で中国産緑豆は3倍以上に上昇したにもかかわらず、もやしの小売価格(家計調査)は2割以上も安くなった。
 その結果、全国のもやし生産者は、この30年で8割減の110軒ほどに。林さんが理事長を務め、54社が加盟する「もやし生産者協会」(東京都足立区)では最近も数社が廃業した。林さんは「安くて、おいしくて、調理しやすいもやしは最高の食材。なくなっちゃ困る食品を作っているプライドがある」と政府には、生産コストに見合う値付けが可能になるようスーパーなどが優越的な地位を乱用しないことも含め、環境づくりを期待している。(押川恵理子)

◆バナナは値上げ要請、鶏卵は5月以降やや高く

 もやしと同様に、長い間大きな価格変動がなかったバナナや鶏卵も、値上げを巡るせめぎ合いが強まっている。フィリピン政府は今月、バナナの値上げを日本の小売業界に要請した。燃料や肥料、物流などのコストが上昇し、農家や流通業者の努力だけでは対処できないためという。
 バナナは集客の目玉商品として店の入り口付近に並び、3~5本で約100円という安値で売られることもある。全国スーパーマーケット協会の広報担当者は「価格は各事業者の判断」と述べた上で「ある程度は値上げを受け入れざるを得ないが、家計が許容しているとは言えない。板挟みになっている」と困惑する。
 鶏卵は5月以降、例年に比べてやや高い値動きで推移している。業務用の需要が強いほか、世界的に穀物の供給が不足して飼料価格が上がったことも背景にある。政府は飼料価格の安定に向けて補助金事業を強化したが、あくまで「激変緩和」(農林水産省)。飼料価格が高止まりすれば、鶏卵の価格も高騰する恐れがある。(妹尾聡太)

おすすめ情報

経済の新着

記事一覧