国の生活保護費引き下げは「違法」 東京地裁判決、処分取り消す 全国3例目、憲法判断はせず

2022年6月24日 20時34分
東京地裁などが入る裁判所合同庁舎

東京地裁などが入る裁判所合同庁舎

 国が2013~15年に段階的に生活保護費を引き下げたのは生存権を保障する憲法25条に違反するとして、東京都内の生活保護受給者31人が、自治体に引き下げ処分の取り消しなどを求めた訴訟の判決で、東京地裁(清水知恵子裁判長)は24日、厚生労働相による引き下げの過程や手続きに過誤や欠落があり違法として、処分を取り消した。(小沢慧一)
 29都道府県で同種訴訟が起こされ、11件目の判決。引き下げを違法と認めたのは、昨年2月の大阪地裁、今年5月の熊本地裁に次ぎ3例目。違憲かどうかの判断はせず、国への慰謝料の請求は認めなかった。
 国は物価下落などを理由に、13年8月からの3年間で生活扶助の基準額を平均6.5%引き下げ、計約670億円を削減した。
 判決は、物価下落に基づく減額分の「デフレ調整」について、厚労省が独自に算定した指数を用いたことで、テレビなど「教養・娯楽費」の価格下落の影響が大きくなり、生活保護世帯の消費構造とはかけ離れたものだと指摘。「保護受給世帯の所得の実質的増加の有無、程度を正しく評価し得るものではない」とした。
 また引き下げは審議会など専門家の検討を経ておらず、「統計などの客観的な数値との合理的関連性を欠き、専門的知見との整合性もない」と指摘。改定によって生活保護受給世帯の96%が減額となり、影響も重大だとして、厚労相の裁量を逸脱していると結論づけた。
 厚労省は「判決内容の詳細を精査し、関係省庁や自治体と協議した上で今後の対応を決定したい。今後とも生活保護行政の適正な実施に努めたい」とコメントした。

◆「病気になると生活できない」 控訴しないよう求める原告

 生活保護費の引き下げを違法とした24日の東京地裁の判決。原告の東京都内12区6市に住む生活保護受給者からは「やっと報われた」と喜びの声が上がった。
 判決後の記者会見で、新宿区の原告の女性(71)は「違法と認められてうれしい」と明るい表情を見せた。
 女性は中学卒業後、母の介護を続けながら生花店やヘルパーなどの仕事をしてきた。母は2003年に他界。腰痛の悪化もあり、04年から生活保護を受けるように。13~15年の引き下げで受給額は月約2万円減り、現在は年金と合わせて約8万円。唯一の趣味だった絵も、画材が買えなくなり諦めた。訴訟では意見陳述に立ち「生活実態をふまえ、私たちの立場に寄り添った判断をしてほしい」と裁判官に訴えた。
 2年前の腰の手術で出費がかさみ、「病気になると生活ができない。怖くてたまらない」とおびえる。会見で今後について問われ「体調が悪く、裁判所に赴くのすら厳しい。控訴しないでほしい」と願った。
 弁護団長の宇都宮健児弁護士は「物価が高騰し、生活保護受給者はますます生活が追い込まれている。国は直ちにもとの基準額に戻すべきだ」と主張した。(小沢慧一)

関連キーワード


おすすめ情報