生活保護費訴訟の判決 厚労省の引き下げ手法に疑問符 「専門家の検討経ずに独自判断」

2022年6月25日 06時00分
 生活保護費引き下げ処分の取り消しをなどを巡る訴訟で東京地裁は、引き下げを違法として処分を取り消す判決を下した。今回を含め、原告側が勝訴した3件の判決がいずれも不合理だと判断したのが、物価下落を根拠に一律に4.78%を減額した「デフレ調整」だ。平均引き下げ幅が6.5%と大きくなった要因となったが、専門家に議論を諮ることなく、独自の手法で生活保護費引き下げを正当化した厚労省に、あらためて疑問が突きつけられている。
 厚労省はデフレ調整に当たり、総務省が公表している消費者物価指数(CPI)ではなく、独自に算出したCPIを用いた。総務省のCPIでは、2008~11年の物価下落率は2.35%だったが、独自CPIでは4.78%と高い値が導かれた。
 判決は、これに寄与したのがテレビやパソコン、カメラなどの技術革新などによる価格下落だったとした。一方、テレビやパソコンを含む教養娯楽費の支出は10年、一般の家計では全体の11.5%を占めたのに対し、生活保護受給世帯は2人以上で6.4%、単身では5.6%と約半分。両者では消費構造が大きく異なり、独自CPIを生活保護世帯に当てはめるのは不適当だとした。
 厚労省が物価下落の起算時期を08年としたことについても、総務省CPIでは07~08年に物価が上昇していたとして疑問視。これまでは消費実態を重視する考えから、改定に当たって物価変動を考慮しなかったのに対し、デフレ調整は「何ら専門家による検討を経ることなく、厚労相の独自の判断で行われた」とし、専門家の知見とも整合しないとした。
 「07年以降、食料費や光熱水費など低所得世帯の家計に重要な物価はむしろ上昇している」とし、そもそもデフレ調整を行う必要性も乏しかったとも指摘した。(小嶋麻友美)

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