動くZ世代 気候変動、海洋汚染 解決へ マララさん、グレタさんが目標

2022年6月25日 06時58分

活動の打ち合わせをする高校生団体「50cm.」の(左から)柳川樹希さん、佐藤晴奈さん、加藤心寧さん=東京都新宿区で

 Z世代と呼ばれる10代、20代の若者が気候変動や海洋汚染などの社会問題解決へ立ち上がっている。なぜなのか、同世代の記者(25)が取材した。
 「このフルーツのドリンク、ビーガンだね」「ストローも紙だ」。6月上旬、都内のダイニングレストラン。SDGs(持続可能な開発目標)に取り組む高校生団体「50cm.(センチ)」のメンバー3人が、運ばれてきた飲み物をインスタグラム投稿用に撮影していた。
 団体名には、身の回り半径50センチから行動を起こそうという思いが込められている。2018年5月に設立され、メンバーは約10人。交流サイト(SNS)上で発信したり、無料古本市を実施したりする。インスタグラムのフォロワー数は約1600人に上る。

◆干ばつ、海面上昇…SNSで情報集め

 代表は川崎市の高校2年佐藤晴奈はなさん(16)。10歳の誕生日に、女子の教育を受ける権利を訴えノーベル平和賞を受賞したマララ・ユスフザイさん(24)=パキスタン出身=の著書を祖母から贈られた。「マララのようになりたい」と思った。
 中学生の時、温室効果ガス削減を訴えるスウェーデンの環境活動家グレタ・トゥンベリさん(19)の姿に刺激を受けた。SNSで干ばつや海面上昇などについての情報を集めた。「気候変動が危ない、とのんきに言っていられない」と感じた。
 今は、買い物をした時にビニール袋を受け取らないのは当たり前で、私服は古着を選ぶ。畜産業は牛のゲップを通じて温室効果ガスのメタンを排出するので、食事は基本的に、肉や乳製品を使わないビーガン料理に変えた。

◆「問題を先延ばしにせず」

 SNSでは、お気に入りのビーガン料理店を紹介する。「ビーガンって宗教的だという固定観念があった。でも本当はおしゃれなんだよと伝えたい」

ビーガン料理を食べる佐藤さんの食事メニュー

 昨年英グラスゴーで開かれた国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)では世界の平均気温の上昇を産業革命前と比べて1.5度に抑えることが事実上の目標になった。佐藤さんは「日本政府は気候変動の問題を先延ばしにせず、解決に向けて進んで取り組んでほしい」と話す。
 本当は肉が大好き。1.5度目標が達成された後、解禁するのを楽しみにしている。
 副代表で都内の高校2年柳川樹希いつきさん(16)の活動のきっかけは中学時代に抱えた違和感。通っていた学校は東京都教育委員会が指定していた「持続可能な社会づくりに向けた教育推進校」の一つだった。教師が無理やり授業内容をSDGsに結び付けているように感じ「机上の空論ではいけない」と思った。
 友達に「意識高い系」と思われるのは怖いが、「注目してもらえるのは高校生のうち」とSNSでSDGsについて発信。感想が返ってくるとうれしくなる。

◆湘南から海外にも、ごみ拾いの輪

 神奈川県の湘南地域に拠点を置く任意団体「NAMIMATI」は20年7月に設立され、海岸でのごみ拾いや規格外野菜を使ったカレー販売などを行う。

NAMIMATIの清掃活動。ビニール袋の代わりに、ビールの原料として使う麦芽を入れる袋を使う=大阪府泉南市の泉南ロングパークで(NAMIMATI提供)

 代表の斎藤克希かつきさん(24)は、同県鎌倉市の稲村ケ崎海岸の近くで育ち、海洋プラスチック問題に関心があった。海のごみ拾い活動に行くと、若者の参加者は自分だけだったので「学生主体で社会課題を話し合いたい」と団体をつくった。
 ごみ拾いをする際には、デザイン性の高い、麦芽を入れる袋を使ってインスタ映えを狙う。SNSで仲間が増え、関西や米国などに4つの支部を展開。現在は約200人が所属する。斎藤さんは「Z世代が各世代をつなぎ、SDGsのムーブメントを起こしていきたい」と意気込む。

<Z世代> 1990年代半ばから2010年ごろに生まれた若者。デジタル技術を使いこなし、社会問題への関心が高い傾向にある。1960年代半ばから80年ごろに生まれた世代を「X世代」と呼び、その後が「Y世代」とされる。Z世代の次は「α(アルファ)世代」といわれる。

 東京新聞では、より良い未来を模索する動きを取材しながら議論するチームをつくりました。国連のSDGs(持続可能な開発目標)を鍵にして、さまざまな課題を考えています。

◆今月の鍵

 今月の鍵は「目標13 気候変動に具体的な対策を」「目標14 海の豊かさを守ろう」。
 記者自身にも、気候変動など世界が抱えている問題は山積していて、被害を受けるのは若い世代なんだろうという漠然とした危機感があります。干ばつや海洋プラスチック問題などの現状を伝える衝撃的な映像の影響もあると思います。ただ具体的な行動に移したことはありませんでした。
 「何事も楽しくなければ続かない。SDGsの取り組みも堅苦しく考えてほしくない」。50cm.代表の佐藤さんの言葉です。最初は「SNSに投稿するため」でも良いのかもしれません。気軽に踏み出せる一歩を探したいと思います。
 文・鈴木みのり 写真・内山田正夫

鈴木みのり記者

鈴木みのり(すずき・みのり)=千葉支局

 1996年、神奈川県川崎市生まれ。小学校の職業体験の授業をきっかけに記者に憧れる。2019年入社。千葉支局で県警を担当。家でくつろいだり、近所を散歩したりして息抜きをする。子どもや教育問題に関心がある。(2022年6月26日更新)▶▶鈴木みのり記者の記事一覧



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