アメリカ最高裁「憲法は中絶の権利を与えていない」 49年前の判決覆す バイデン氏「悲劇的な過ち」

2022年6月25日 10時59分
 【ワシントン=浅井俊典】米連邦最高裁は24日、人工妊娠中絶を憲法上の権利として認めた1973年の最高裁判決を覆し、中絶を規制する法律を容認する判断を示した。国としての統一基準がなくなり、今後は中絶の可否の判断が各州に委ねられることになる。半世紀にわたって守られてきた女性の権利が否定されたことへの米社会の衝撃は大きく、11月の中間選挙で争点となる見込みだ。
 最高裁は昨年12月から、妊娠15週以降の中絶を原則として禁止する南部ミシシッピ州の州法が憲法違反にあたるかどうかについて審理していた。今回の判断で最高裁は「憲法は中絶の権利を与えていない」と結論付けた。
 米国で中絶は社会を二分する問題。最高裁は73年の「ロー対ウェード」判決で、胎児が子宮外で生存可能になるとされる妊娠24週以前の中絶を合憲と判断し、中絶を女性の権利として初めて認めた。今回の判断は73年判決や過去の類似判例を覆し、「中絶を規制する権限は国民と、国民に選ばれた議員に返されるべきだ」とした。
 バイデン大統領は最高裁の判断を受けてホワイトハウスで演説し、「悲劇的な過ちだ」と批判した。「この極端な判断のために、性暴力を受けて望まない妊娠をした女性が子どもを産まざるをえない状況に追い込まれる。最高裁の保守派が国民の大多数の意見からかけ離れた存在であることを示した」と指摘。女性が中絶する権利を守る連邦法の制定を目指す考えを示し、中間選挙で自身の所属する民主党に投票するよう呼びかけた。

◆トランプ氏「今日の判断は大いなる勝利」

 米国の最高裁判事9人の構成は保守派6人、リベラル派3人で、保守派に優位な判断が相次いでいる。保守派のうちの3人は、共和党のトランプ前大統領が73年判決を見直すために在任中に任命した。トランプ氏は24日の声明で「今日の判断は大いなる勝利だ。私が3人の最高裁判事を指名し、承認させたからこそ実現できた」と自らの功績を強調した。
 この裁判を巡っては、73年の判決を覆す多数派意見の草稿が正式判断の前に米政治サイトで報じられた。途中経過が外部に流出するのは極めて異例で、全米各地で73年判決見直しの動きに抗議する大規模なデモが起きた。

24日、米ワシントンの最高裁前で、女性の中絶する権利を否定した判断に抗議するデモ参加者=浅井俊典撮影

◆最高裁前で大規模デモ「私の身体、私が選ぶ」

 米連邦最高裁が24日、人工妊娠中絶を憲法上の権利として認めた1973年の最高裁判決を覆す判断を下したことを受け、首都ワシントンの最高裁前では、判断の直後から中絶の擁護を訴える人らによる大規模なデモが行われた。
 数百人の人たちが、中絶の権利を訴える「私の身体、私が選ぶ」などと書かれたプラカードを掲げて抗議した。ワシントンに住む団体職員のオリビア・ブレイリーさん(26)は「今日ほど無力さを感じたことはない。民主主義やアメリカについて学んできたことがこの判断で打ち砕かれた」と落胆した。
 同性婚などの問題についても保守的な判断が下されるおそれがあるとして、「希望を持ち続けるために選挙で1票を投じたい」と話した。
 最高裁前には中絶反対派の人たちも集まった。東部メリーランド州から夫と4歳の娘とともに駆けつけたモニカさん(46)は「今日は素晴らしい日。(保守派の判事3人を任命した)トランプ前大統領のおかげでこの判断が実現した」と喜び、「胎児が小さいからといって殺していいわけがない」と訴えた。(ワシントン・浅井俊典)

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