日英の絆をつないで半世紀 文化交流に尽力の加藤節雄さん、ジルさん夫妻 日本の陶芸と縁深い地で活動

2022年6月25日 12時00分

12日、英南部デボンで、茶わんづくりを指導するジルさん(左から2人目)と節雄さん(左)=加藤美喜撮影

 日英の文化交流に半生を注いできた英国人と日本人の夫婦がいる。陶芸家のジル・ファンショー加藤さんと、ジャーナリストの加藤節雄さん(81)は、結婚して約50年。近年、日本の陶芸と縁の深い英南部デボン州に居を移した2人は、新型コロナウイルスで停滞していた制作活動を再び本格化。日英の架け橋として忙しく駆け回っている。(デボンで、加藤美喜)

1978年、晩年のバーナード・リーチ(右)と話すジルさん=加藤節雄さん撮影

 「日本では、その土地の土を生かすことを大切にします。土に命を吹き込むのです」。今月中旬、デボンのダーティントンホールで、ジルさんのワークショップがあった。節雄さんが理事を務める日本の文化交流団体が主催。茶道の裏千家の講師が「わび」の概念を紹介し、ジルさんが実際の茶わんづくりを指導。チケットは完売となり、地元の関心の高さを示した。
 同ホールは、日本で学んだ英国人陶芸家バーナード・リーチと民芸運動の浜田庄司、柳宗悦が中心になり、1952年に国際工芸家会議を開いた場所。今年はちょうどその70周年でもある。
 茶わんづくりに参加した地元のトム・ホールさん(69)は「英国もウェッジウッドに代表される陶磁器産業があるが、日本の陶芸は非対称や不完全な要素が美しいとされ、興味深い」と懸命に土をこねていた。英国ではコロナ禍で陶芸に関心を持つ人が増えたという。

ジルさんの作品=ジル・ファンショー加藤さん提供

◆「東と西の結婚」貫いた半生

 デボン出身のジルさんは若いころ、旅行先の日本で魚用の長い皿や湯飲みなど、日常使いの手作りの陶芸品に魅せられた。一方、東京出身の節雄さんは70年にシベリア鉄道経由でロンドンへ。雑誌の仕事をしていた際に日本語学校で生徒のジルさんを取材したのが出会いだった。その後節雄さんの自宅に泥棒が入り、カメラをすべて盗まれた時に、ジルさんがカメラを貸したのが縁となり、74年に結婚した。
 ジルさんは結婚後、日本で備前焼の井高洋成氏や、「チェルノブイリ・シリーズ」の鯉江良二氏(中日文化賞)に師事。鯉江氏が岐阜県に工房を移した時も、工房に泊まり込んで制作した。たびたび日英を往復しながらロンドンの大学で陶芸を教え、日本でも40回以上の個展を開催。教え子の多くが陶芸家になった。
 節雄さんはジャーナリストとして実績を重ね、現代の英国を日本に紹介する多くの著作を出版。2019年には日英交流への尽力で女王からMBE勲章を授与された。

5月25日、バッキンガム宮殿のパーティーに招待された加藤節雄さんとジルさん=加藤節雄さん提供

 「節雄と私は助け合ってきた」とジルさん。「互いの自由を尊重し、互いの国を理解するようにも心掛けてきた」と話す。「陶芸は奥が深く、どれだけ階段を上っても終わりがない」といい、今後も積極的な創作活動を続ける予定だ。
 「東と西の結婚」を理想に両者の伝統の融合を目指したリーチ。その晩年に親交を持ち、著作もある節雄さんは「僕とジルが目指すのもリーチのような世界。英国と日本の両方に足を置いて、これからも2人でやっていきたい」。

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