障害がある人も投票しやすい環境を 点字がない公報、字幕がない政見放送…進まない法改正

2022年6月25日 18時28分
 7月10日投開票の参院選に向け、障害者が投票しやすい環境づくりを求める声が相次いでいる。点字つきの選挙公報が行き届かなかったり、政見放送に手話通訳や字幕がないケースがあったりして、障害者が投票先を決める際の「壁」になっているためだ。当事者団体は「一票の権利は重い」として法改正や運用改善を訴える。(大野暢子)
 認定NPO法人「日本障害者協議会(JD)」は投票時に感じた不自由さの実態把握のため、心身に障害がある人や家族らを対象にオンライン調査を実施。200件余りの意見が寄せられ5月末に結果を公表した。
 候補者の経歴や政見などを選管がまとめた選挙公報については「点字版がほしい」「弱視者向けの拡大文字版も提供して」などの要望があった。公職選挙法は選挙公報を有権者がいる世帯に投票日の2日前までに配るよう市町村の選管に義務付けているが、点字版や音声版を想定した規定はない。
 現在は、都道府県が当事者団体の協力を得て点字や音声に置き換えた資料を用意している。しかし公共施設に置いているだけの自治体もあり、確実に届く仕組みになっていない。
 政党や候補者がテレビで政策などを訴える政見放送については、出演者が自主的に手話や字幕を付ける傾向が定着している。だが公選法に規定はなく、出演者の裁量に委ねられている。
 いずれも投票に関する健常者と障害者の情報格差に直結するため、一般財団法人「全日本ろうあ連盟」の石野富志三郎理事長は取材に「候補者を選べる条件を、耳が聞こえる人とそろえてほしい」と強調した。

◆投票所で差別的な対応も

 JDの調査には、投票所の環境改善に関する意見も届いた。自筆が困難なため職員に投票用紙への代筆を頼んだところ「周囲に聞こえる声で候補者名を確認された」という。憲法が保障する「投票の秘密」に触れかねない事例だ。投票所に足を運んだのに、知的障害者が「投票する意思があるのか」と問われるなど、差別的な対応を受けたという訴えも複数あった。
 公選法上、重度の身体障害者らに限られている郵便投票の対象を拡大するよう求める意見もあった。
 自身も視覚障害があるJDの藤井克徳代表は「選挙公報は、活字版とともに点字版などを公選法に位置付けるべきだ」と法改正を要望。投票所での差別的な対応は「運用で改善できる」と意識改革を求めた。
 政府は選挙公報の点字化について、候補者に関する情報が大量で、短期間で準備することが難しいことなどを理由に消極的だ。政見放送に手話を付けることにも「選挙運動への介入になる可能性がある」(総務省選挙部)と慎重姿勢だ。

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