リニア工事「国策」で幸せ壊さないで 地下にトンネル 不安募る沿線住民

2022年6月26日 06時00分
リニア中央新幹線ルート近くの多摩川河川敷で不安を口にする小川優香さん=東京都大田区で

リニア中央新幹線ルート近くの多摩川河川敷で不安を口にする小川優香さん=東京都大田区で

 東急東横線の多摩川駅から1キロほど西の多摩川河川敷には、白や黄のチョウが舞っていた。「幸せを壊さないでほしい。それだけ」。小川優香さん(50)=東京都大田区田園調布=がつぶやいた。
 河川敷の地下深くをリニア中央新幹線のトンネルが通る予定だ。近くに建つ小川さんの自宅はルートの真上ではないが、20メートルも離れていない。「家が崩れる可能性があるので、家の下に穴を掘るのをやめてほしい。非常にシンプルな話なんです」
 小川さんは2013年に2組目の双子を出産したのを機に、自然豊かな環境で子育てしようと決意。14年、当時住んでいた渋谷区内のタワーマンションから、多摩川駅近くの借家に引っ越した。その後、条件にあった土地が見つかり、16年冬に念願のマイホームを建てた。
 4人の子どもは不妊治療で授かった。子どもたちは川で泳いだり、小魚を捕ったり。思い描いた通りの幸せな暮らしを足元から崩したのがリニア工事だった。反対派の住民から20年ごろに聞いた。「最初、意味が分からなかった」と振り返る。
 なぜ、自分が知らないうちに、家のすぐ近くの地下に穴を掘ることが決まっていたのか―。
 答えは、01年施行の大深度地下使用法だった。用地を買収しなくても深さ40メートル以上の地下を使えるようになった。リニア工事は大深度地下事業だ。大深度工事は「地上に影響を及ぼさない」というのが、政府が繰り返した「大前提」だった。

◆陥没事故起きても動かない政府


 ところが、東京都調布市の東京外郭環状道路の地下トンネル工事のルート上で20年10月、同法に基づく工事で初の陥没事故が発生。「前提」はあっけなく崩れたが、工事を認可した国土交通省は同法の見直しどころか、「『大深度だから安全』と保証するものではない」と言い始めた。
 「影響が出ると知っていたのに大深度地下使用法という法律をつくったなら、それは『加害者』。政治を信頼していたわけではないが、まさか国民を傷つけるとは思っていなかった」。小川さんの言葉は鋭さを増す。
 国はリニア建設に3兆円の財政投融資を投じ、JR東海は「国策」と呼ぶ。7月10日投開票の参院選でも国の姿勢が問われそうだ。
 小川さんは訴える。「JRはリニアを『日本のためだ』とおっしゃる。でも、穴が空く心配をしないで、安心して子どもを育てることこそ、日本のためだと思う。幸せを壊す国策は見直した方がいい」(加藤益丈)

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