銃規制と中絶の権利、相次ぐ保守派寄り判断 崩れた判事の政治思想バランス アメリカ最高裁

2022年6月25日 20時14分
アメリカ最高裁判所

アメリカ最高裁判所

 【ワシントン=吉田通夫】保守派判事が多数を占める米連邦最高裁が23日から24日にかけ、国論を2分する政治問題で共和党寄りの判断を相次いで示した。米国民が自衛のため銃を持ち歩く権利を認めた一方で、女性が人工中絶する権利は否定。判断を支持する共和党と反発する民主党の支持者による対立は深まるばかりで、11月の中間選挙ではいずれの問題も争点となる見通しだ。
 民主党のバイデン大統領は、中絶についての判決後に演説し「最高裁の保守派がいかに極端かを示した」と批判。中間選挙で「女性の権利を法制化する議員を選出しなければならない」と訴えた。共和党のトランプ前大統領は声明で「私が3人の判事を指名して承認させるなど、公約をすべて実現したからだ」と強調。中絶に反対してきたキリスト教右派の福音派などの支持層にアピールした。
 米国では判事も保守派とリベラル派に分かれ、政治的な問題に異なる判断を下す。ブルッキングス研究所のラッセル・ウィーラー客員研究員は「最高裁では法律そのものより解釈が問題になることが多く、判事の政治思想が前面に出てしまう」と説明。現在の構成は共和党政権時に選任された保守派が6人で、リベラル派は3人にとどまる。かつては拮抗するよう配慮されてきたが、トランプ氏がリベラル派の後任に保守派を指名するなどして、バランスが崩れた。

◆世論と食い違う最高裁の判断

 このため、最高裁の判断は世論と食い違い始めている。世論調査会社ギャラップによると、昨年10月時点では52%が銃器販売の規制強化を求め、現状維持(35%)や緩和(11%)を上回った。中絶の権利についても、今年5月時点で容認派が55%で、反対派は39%にとどまった。加えて、最高裁を信頼していると答えた人は今年6月時点で25%と、調査が始まった1973年以来最低だった。
 カリフォルニア州立大ロースクールのメアリー・ジーグラー教授(法制史)は「現在の最高裁は、これまでよりもはるかに急速に党派的な法改正を進めようとしている」と指摘。「最高裁が一方的な立場をとったことで分断は深まり、裁判所や民主的な制度への不信感は高まるだろう」と社会の不安定化を懸念した。

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