高齢化の村 人気パン復活 「とら」引き継いだ移住の若者 南牧の道の駅で金−日曜販売 村民や観光客訪れる

2022年6月26日 08時01分

「とらのこぱん」を作る古川拓さん(左端)とスタッフたち=南牧村で

 人口の65%以上が高齢者の群馬県南牧村で、素朴な地元グルメとして愛されてきた「とらおのパン」。長年焼き続けてきた炭焼き職人が亡くなった後に途絶えた味を、移住者の若者が引き継いだ。残された窯を使い、再現した製品の名称は「とらのこぱん」。コンビニがなく、村民や観光客が買い物に訪れる道の駅で金−日曜日に約四百五十個を販売。連日ほぼ完売する人気となっている。

「とらのこぱん」

 トラ模様をイメージした切り目が入った焦げ茶色の表面。道の駅に納入される「とらのこぱん」は、焼き窯の燃料に使われるカシの木の甘い香りがほのかに鼻をくすぐり、かじると中身のふんわりとした食感を楽しめる。
 先代となる「とらおのパン」は、村の炭焼き職人だった中沢虎雄さんが約二十年前に生産し、長らく人気だった。昨年春に中沢さんは高齢で引退し、七月に八十三歳で亡くなった。生前に小屋や窯の寄付を受けた村が利用者を募ると、古川拓さん(28)の会社が名乗り出た。
 古川さんは大学生だった二〇一五年、民間シンクタンクが前年に「最も消滅する可能性が高い自治体」と評した村に関心を持ち、初めて訪れた。
 駅や信号がないことに驚いたが、「親しみやすい村民の方々と話すと元気が出て、無性に暮らしたくなった」と、二〇年一月に横浜市から移住。造林を主力事業とする会社を立ち上げ運営する中で、かねての好物だった「とらおのパン」をよみがえらせたいと考えた。
 ただ当初は社員の誰もがパンを焼いた経験はなく、レシピもない。そこで、とらおのパンの袋に書かれた原材料を参考にして試作を繰り返し、味を近づけていった。
 村の人口は約千六百人で、半世紀で四分の一以下になった。うち千人余りが六十五歳以上で、高齢化も進んでいる。古川さんは「若者も気軽に訪れてもらえればうれしい。村の素直な魅力を発信し、記憶と遺産を残していきたい」と語った。

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