トルコ大統領、シリア北部に侵攻示唆 敵対するクルド人武装組織一掃を計画

2022年6月26日 20時42分

トルコのエルドアン大統領=AP

 【カイロ=蜘手美鶴】トルコのエルドアン大統領が、敵対するクルド人武装組織を掃討しようと、シリア北部での越境軍事作戦を示唆している。来年実施の大統領選に向けた支持率回復が狙い。ロシアのウクライナ侵攻以降、トルコの存在感が高まっていることを追い風に、軍事作戦への欧米からの批判をかわしたい考えだ。
 AFP通信などによると、エルドアン氏は今月初旬、与党議員との会合で「テロリストの地域を一掃する」と明言した。5月下旬から軍事作戦への言及を始め、「近く実施する」と繰り返している。
 トルコはシリア北部を実効支配するクルド人勢力を、同国の非合法組織クルド労働者党(PKK)と一体化した「テロ組織」として敵視。作戦では要衝マンビジュとテルリファトの制圧を狙い、国境沿いのシリア領内では約30キロ幅にわたる非武装の「安全地帯」を完成させ、住宅数千戸を整備する。トルコ国内のシリア難民約360万人の帰還を促し、安全地帯ではトルコ通貨リラを適用させて「トルコ化」を図っている。
 ウクライナ侵攻以降、トルコは経済・軍事的な関係が深いロシア、ウクライナ両国に停戦を仲介するなど、多方面で存在感を示す。北欧2カ国の北大西洋条約機構(NATO)加盟申請には両国がPKKを支援しているとして反対し、黒海入り口の海峡で艦船の通航を制限してロシアにも影響力を持つ。ウクライナの穀物輸出のため、黒海に「回廊」設置を提案するなど、国連とも調整を進める。
 トルコは2016年以降、シリアで3度同様の作戦を実施し、欧米から制裁を科されてきたがロシアのウクライナ侵攻で状況が一変。アラブセンター戦略研究所(エジプト)のムスタファ・サラハ研究員は「ウクライナ侵攻は国際的に『トルコが必要』という状況をつくり出した。トルコは自国の利益のためそれを利用している」と話す。
 来年6月に大統領選と議会選を控えるエルドアン氏にとって、低迷する支持率の回復は急務。経済低迷の影響もあり、今月の世論調査では不支持率が51.6%で、支持率44.2%を上回った。クルド人武装勢力の掃討で支持率回復を図りたい考えで、クルド人評論家モハンマド・アルスラン氏(エジプト)は「ナショナリズムを高揚させ、支持率拡大につなげる作戦だろう」と指摘する。

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