<社説>生活保護判決 「物価偽装」への戒めだ

2022年6月28日 07時06分
 国が二〇一三年から三年間、生活保護費を引き下げたのは「違法」と東京地裁が断じた。デフレ調整の手続きに誤りがあったとした。「物価偽装」を認めたも同然で、国への厳しい戒めだ。
 生活保護は食費や光熱費などに充てる生活扶助のほか、医療、住宅、教育などの扶助で成り立つ。その生活扶助の基準額について、国は物価下落などを理由に、一三年から三年間で段階的に引き下げ、約六百七十億円を削減した。
 そのため全国二十九の都道府県の生活保護受給者が訴訟を起こしていた。引き下げを違法と認めたのは、昨年二月の大阪地裁と今年五月の熊本地裁に次いで、東京が三例目となる。極めて妥当な判断であり、高く評価したい。
 厚生労働省はデフレ調整に当たり、総務省が公表している消費者物価指数ではなく、独自に算出した指数を用いた。総務省の指数では、〇八〜一一年の物価下落率は2・35%だが、厚労省の指数は4・78%と高い値を示した。
 それに基づく扶助基準額は平均6・5%減と大きくなった。ぎりぎりの暮らしを送る生活保護世帯には過酷な打撃となったろう。
 そもそも一般世帯と生活保護世帯の消費構造は異なる。やはり食費など日常生活の維持のために必要不可欠な品目の消費支出の割合が大きくなる。一方で、テレビやパソコン、カメラを含む教養娯楽費の支出は少なく、一般世帯の半分程度にすぎない。
 それゆえ、テレビなどの影響度をそのまま生活保護の引き下げ率算定に当てはめては、消費実態とかけ離れたものになる。また、総務省の指数では、〇七〜〇八年に特異な物価上昇があった。翌年は反動として下落率が大きくなる。
 判決は厚労省が物価下落の起算点を〇八年としたことも「合理的根拠に基づくとはいえない」と批判した。つまり、「物価偽装」に等しい算定だったといえる。
 さらにデフレ調整が何ら専門家による検討を経ることがなかった点も司法は問題視した。本来は弱者に寄り添うべき役所が、さらなる生活苦の世界に追いやったわけで、国は猛省すべきである。
 生活保護費は最低賃金や保育料など社会保障制度のベースとなる数字だ。物価の高騰にあえぐ今、生活保護を受ける人々はますます追い詰められている。国は直ちにもとの基準額に戻すべきだ。

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