台風被害は復興できる でも、原発事故は… <東海第二原発 再考再稼働>

2019年11月28日 11時03分
 茨城県東海村の日本原子力発電東海第二原発の再稼働を巡り、「中立」を掲げていた山田修村長が雑誌の取材で再稼働容認とも受け取れる発言をし、波紋を広げた。二十八日は東海第二原発が営業運転を始めてから四十一年。老朽化が進む一方で、再稼働に向けた手続きは止まらない。首都圏唯一の原発の再稼働に疑問を持つロックバンド「BRAHMAN(ブラフマン)」のボーカルTOSHI-LOWさんに聞いた。

ふるさとへの思いを語るBRAHMANのボーカルTOSHI-LOWさん=東京都渋谷区で

 東京電力福島第一原発事故で、茨城県産のホウレンソウが出荷できなくなった。水戸市の実家が営む冷凍食品会社はホウレンソウが主力商品だったので、大ダメージを受けた。関西圏への出荷分は全部だめになり、何年も続いた。原発問題はエネルギーではなく生活の問題だと認識した。
 自分は若い頃に東京に出て、ふるさとを捨てた人間だと思っていた。でも福島の事故が起きたことで、ふるさとって大事なんだという郷土愛に気付いた。
 茨城県だって住めなくなるんだ、地元を喪失するかもしれないんだ、と現実味を帯びて感じた。ふるさとがなくなっていいとは思えなかった。
 それ以来、原発反対の声を上げている。アーティストだからではない。アーティストである前に国民であり、親であり、人間。おかしいことはおかしいと言う。
 ファンは非日常を求めてライブに来るから、嫌がる人もいる。だけど、何を歌うかなんて自分たちの自由だと思っている。
 曲作りでは、聴く人の心に描かれる風景が、自分の訴えたいことと合っていればいい。「鼎(かなえ)の問」という曲では、原発事故をイメージしながら、自分が大事にしているものが失われていく情景を書いた。大事なものが何か、考えるきっかけになってほしい。
 ライブで原発の話をすることもある。「気付くのも気付かないのも自分次第。でも、気付いたら何かしなければならない」と伝えている。
 十月の台風19号では実家も被災した。ボランティアで、県内の被災地で災害ごみの片付けなどを手伝った。台風のような災害は片付けたら復興できる。でも、原発事故はそれができない。
 原発事故は起こらないと言われていたのに起きてしまった。東海第二でも起こり得る。福島の事故はなぜ起きたか。答えが出ないまま、東海第二を再稼働させる理由は一つもない。
 再稼働を判断した時の首長は、何かあった時に責任を取ってくれるのか。これからは事故が起きたら、再稼働を容認した人に責任を取ってもらうようにしたらいい。「それでも再稼働しますか」と問いたい。
 二十~三十年後、自分の曲を聴いた人に「原発なんてものがあったんだ」と思ってもらえる世の中になってほしい。(聞き手・松村真一郎)
 <トシロウ> 本名・宮田俊郎。水戸市出身。15歳でバンドを始める。1995年に結成したロックバンド「BRAHMAN(ブラフマン)」でボーカルを担当し、国内外で活動。甲子園の応援で使われる曲もある。東日本大震災後にNPO法人「幡ケ谷再生大学復興再生部」をつくり、被災地の復興支援に取り組む。
 <東海第二原発> 日本原子力発電が1978年11月に営業運転開始。出力110万キロワットで、電気を東京電力や東北電力に供給。東日本大震災時は外部電源を失い、冷温停止まで3日半かかった。都心に最も近い原発で、都庁までの距離は福島第一からの半分程度の約120キロ。重大事故が起きた場合、首都圏全域に甚大な被害を及ぼす可能性がある。2018年11月に原子力規制委員会が最長20年の運転延長を認めた。対策工事は21年3月までかかる見込み。再稼働には東海村や水戸市など六市村の同意が必要で、首長がどう判断するかが焦点になる。

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