明治の「宝箱」 安住の地へ 香川家史料 学習院大の新ミュージアムに移管 

2022年6月30日 07時08分

茨城県立歴史館の展覧会で展示された「香川家史料」(学習院大史学科蔵)=図録「華麗なる明治」から

 明治天皇の后(きさき)、美子(はるこ)皇后の側近、香川敬三らが遺(のこ)した「香川家史料」。現在は学習院大学史学科(豊島区)に所蔵されているが、二〇二五年春にリニューアル開館する同大の新ミュージアムに移管されることになった。転々としてきた史料に終(つい)の住処(すみか)が確保されて一安心だが、利用者の有効活用には課題も少なくない。
 香川家史料は、皇后宮(こうごうぐう)大夫だった香川敬三と娘の志保子宛ての書簡が中心で、約二万四千点に及ぶ。貴重なものも数多く含まれ、近代史の「宝箱」と言ってもいい。同大学史学科が所蔵するようになったのは、一八年八月だ。

約2万4000点の香川家史料が暫定的に保管されている学習院大史学科の元研究室

 もともとは皇学館大学名誉教授の上野秀治さんが香川家から預かって保存、調査してきた。上野さんが定年を控えて所蔵者の香川擴一(こういち)さんに相談。研究に活用できる体制の整った大学ということで、上野さんの母校でもある学習院大が選ばれた。ちょうど一七年三月に退職した史学科教員の研究室が空いており、史料を収納することができた。史学科の千葉功教授は「緊急避難的な措置」と説明する。
 学習院広報などによると、「霞会館記念学習院ミュージアム」(仮称)は現在の大学図書館に耐震改修を施し、博物館相当の施設としてリニューアル開館する。そこに学習院大史料館が入り、香川家史料も移管される予定という。

2025年春に「霞会館記念学習院ミュージアム(仮称)」に生まれ変わる大学図書館=学校法人・学習院提供

 「新ミュージアムに移管されれば、史料の保存問題は解決できる」と上野さんも歓迎するが、利用者の活用のためには課題も少なくないという。
 上野さんは、皇学館大学で管理していた時代に書簡を整理し、約一千枚に及ぶ仮目録を作成。通し番号を振った二十数個の箱に収納した。史料館でも仮目録のデータ化を進めているが、手書きな上に数が膨大で、目録自体に誤解読もある。「データ化したものを原本によって修正を加えていく必要があるが、それには膨大な労力がかかる上に、近代史料を十分に解読できる専門性のある人材確保がカギとなる」と上野さんは強調する。

香川家史料の手書きの目録。デジタル化が課題だ

 学習院は将来計画「学習院ビジョン150」の中で、新ミュージアムについて「学習院の歴史と知の集積を未来へ伝えるミュージアム」を基本理念に掲げている。運営方法や人員配置などについての本格検討はこれからだが、上野さんは「運営にあたって史料館員など現場の意見や要望もよく聞いてほしい」と注文を付ける。

◆皇室改革の舞台裏 赤裸々に

 香川家史料は近年、研究者の関心が高まっている。茨城県立歴史館の展覧会「華麗なる明治」で展示され、久米美術館(品川区)の日独交流百六十周年記念展覧会「プロイセン気質の日本人」の図録に寄稿された論文にも、史料の写真が掲載された。
 「敬三と志保子の父子が長きにわたって皇后の側近を務めたこともあり、皇后の洋装化など、西洋をモデルにした宮中改革に関する政府内の動向や、その改革にゆれ動く天皇、皇后の様子などが赤裸々に記録されている。同時期の政治・文化研究における、まさに一級史料」。香川家史料の魅力について、茨城県立歴史館首席研究員の石井裕さんは、こう説明する。
 史料を管理してきた上野さんも「私信は差出人の考えや意見、あるいは実情などが記されている。知られていない裏事情が分かることもあり、興味が尽きない」と指摘。「香川家史料の書簡は崩し字が多く、十分に活用されていないが、逆に言えば、新しい史実の掘り起こしの可能性がある」と期待する。
 文・吉原康和/写真・吉原康和、平野皓士朗
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