「京浜に残りたい」JFEスチール高炉休止計画に募る不安 口つぐむ従業員<参院選神奈川>

2022年6月30日 07時25分

川崎臨海部の航空写真。右中央が来年9月に休止となるJFEスチールの高炉(市提供)

 「家も生活もあるのだから行けないよ」
 来年九月をめどとするJFEスチール東日本製鉄所京浜地区(川崎市川崎区)高炉休止計画で、大半が中国地方への配転が見込まれる社員ら約千二百人の切実な声の一つだ。社員やOBでつくる「JFEスチール京浜の高炉休止に反対し職場を守る会」に届いた。
 守る会は昨年二月〜今年五月、対面と電話でアンケートをし、三十〜七十代の約六十人から回答を得た。「若い人の退職続出。どうにもならない」「母と二人暮らし、転職は困難」…。困惑の声が相次いだ。
 「親戚も友人もこの地域にいる。縁もゆかりもない土地に行けと言われても」。高炉休止で失われる職場に勤める中堅社員の男性も、本紙の取材に不安を隠さない。「みんな高炉休止には不満を持っているが諦め状態。組合が動くと思ったが、会社の言うがままで機能していない」
 守る会によると、約千二百人の配置転換は千葉が百二十人、仙台が八十人などで、ほか大半は広島や岡山への転勤を計画しているとみられる。
 別のアンケートで「京浜に残りたい」などと答えた人は五割を超えたが、今は配転のための面談が続いていて多くの人が口をつぐんでいるという。守る会の事務局長、名越高治さん(71)は「これが、本当の声だ。大勢の人が辞めざるを得ない」と嘆く。
 JFEは高炉休止計画による固定費の削減などで、年間約八百五十億円の収益改善効果を見込む。
 社員約千二百人の雇用は配置転換で確保するとし、転勤希望地区などを面談で確認している。持ち家の売却経費の一部を会社が負担するなどの支援策も表明し、転勤できずに退職せざるを得ない場合、割増退職金の支給や一年を限度とした休職期間中の転職支援を行うとした。
 ただ、約二千人とされる関連企業への雇用の影響はさらに深刻だ。JFEは「誠意を持って対応」し、他地区の企業への転職支援を進めるというが、国や自治体による連携本部の本部長を務める川崎市の玉井一彦経済労働局長は「裾野が広く、経済面や雇用面にどんな影響が生じるのか見通せない」と懸念する。
 高炉休止後の跡地は脱炭素社会を先導するエリアとし、次世代クリーン燃料として技術開発が進む水素やアンモニアの受け入れ・供給拠点整備などを検討している。市は本年度中の土地利用方針策定を予定する。
 広大な跡地利用の構想を描く足元に広がる不安。
 守る会事務局次長の藤田重則さん(71)は本年度半ばの内示で、多くの人が退職を考える状況に追い込まれる、とみる。高炉休止より前の解散を発表した関連会社も既にある。「JFEの下請けは小さい地元企業が多く、転勤先もない。行政は早期に関連企業を含めた再就職支援を始め、JFEは次の会社でも同様の労働条件で働けるよう保障をしてほしい」と訴える。(竹谷直子、北條香子)

◆主要候補者アンケート

(問) 京浜工業地帯を象徴するJFEスチール東日本製鉄所京浜地区の高炉休止計画に伴い、雇用喪失など地域経済への影響が懸念されます。支援策について、跡地利用案なども含めて意見をお答えください。
 自民現職の三原じゅん子さん(57)は「跡地の有効利用を含め、地域経済や雇用への影響は最低限となるよう国県市と連携する」と答えた。
 自民元職の浅尾慶一郎さん(58)は「雇用喪失における地域経済支援は国・地方議会と協力。研究所など新技術に投資できる場としての活用」を挙げた。
 立民新人の寺崎雄介さん(50)は「現在、JFEと川崎市が慎重に協議をしているので一個人としてのコメントは控えたい」と回答した。
 立民新人の水野素子さん(52)は「高炉休止に伴う雇用確保・中小企業支援が必要であり、国県市において早期に具体策を策定すべきです」とした。
 公明現職の三浦信祐さん(47)は「多大な影響を受ける雇用について、特にグループ会社や協力会社など下請けで働く労働者の再雇用支援が重要」と答えた。
 維新元職の松沢成文さん(64)は国や行政の連携支援を挙げ「規制緩和で防災・環境等の最先端拠点として活性化。人が集まるテーマパーク等も検討」とした。
 共産新人の浅賀由香さん(42)は「国とJFEは責任をもって関係労働者の雇用を守り、中小企業支援を強化し地域経済を守ることが必要」と求めた。
 国民新人の深作ヘススさん(37)は「交通利便性向上が必要不可欠。周辺企業の工業用水負担が大きくなる不安があることから、対策にも取り組む」とした。
 社民新人の内海洋一さん(63)は「かつて公害の町と言われた地区。自然エネルギー技術開発で新たな時代をリードする拠点に。雇用創出も可能」と答えた。
 いずれもNHK党新人の重黒木優平さん(35)は「転職の際に国や自治体に支援を求めることは必要」、橋本博幸さん(39)は「いかんです」、小野塚清仁さん(49)は「計画に詳しくないので答えられない」、飯田富和子さん(53)は「水素の供給拠点や最先端技術の実験場を整備していくとのことで良いのでは」と答えた。
 諸派(幸福実現党)新人の壱岐愛子さん(36)は「景観価値も高い川崎高炉は雇用問題からも維持すべきです」と回答。
 諸派(共和党)新人の首藤信彦さん(77)は「産業をどう変容させていくか改革の全体像の中で考えるべきだ」とした。

◇選挙区立候補者(届け出順)(改選4+1…22) 

寺崎雄介 50 立新
重黒木優平 35 N新
浅賀由香 42 共新
水野素子 52 立新
橋本博幸 39 N新
三浦信祐 47 公現<1> 自
内海洋一 63 社新
三原じゅん子 57 自現<2>
グリスタン・エズズ 37 諸新
萩山あゆみ 44 諸新
浅尾慶一郎 58 自元<2>
小野塚清仁 49 N新
松沢成文 64 維元<2>
深作ヘスス 37 国新
久保田京 45 諸新
藤沢あゆみ 55 無新
壱岐愛子 36 諸新
飯田富和子 53 N新
首藤信彦 77 諸新
針谷大輔 57 諸新
藤村晃子 49 諸新
秋田恵 40 無新
 党派の略称は、自=自民、立=立民、公=公明、維=維新、共=共産、国=国民、社=社民、N=N党、諸=諸派、無=無所属(候補者の年齢は投票日基準)
 ※+1は合併選挙で非改選の欠員1を補充

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