<社説>世界食料危機 黒海での輸送妨げるな

2022年6月30日 07時47分
 アフリカを中心に食料危機が襲っている。ウクライナに侵攻したロシアが黒海を封鎖したのをきっかけに、ウクライナの穀物輸出が滞っているためだ。ロシアは黒海航路の安全輸送を保障すべきだ。
 ウクライナは肥沃(ひよく)な黒土に恵まれ、「欧州のパンかご」とも呼ばれる穀倉地帯が広がる。小麦の輸出量は世界第五位を占め、ヒマワリ油は最大の輸出国である。
 穀物の大半を黒海経由で輸出しており、オデッサなどの港から主にエジプトをはじめとした中東・アフリカへ出荷されている。
 ところがロシアが黒海を封鎖し、ウクライナもロシアの侵攻を防ぐために機雷を敷設したため輸送ルートがふさがれてしまった。ウクライナ国内には二千万トン以上の小麦が滞っている。
 あおりで中東・アフリカでは穀物価格が高騰して社会不安が広まり、飢餓の危険も高まっている。国連は今年中に世界で最大三億二千三百万人が深刻な食料危機に陥る、と警告している。
 ドイツで開かれた先進七カ国首脳会議(G7サミット)は、途上国への食料支援に四十五億ドル(約六千百億円)を拠出することを決めた。
 食料安全保障に関する声明も発表し、ウクライナ侵攻は飢餓の危機を劇的に悪化させたとして「ロシアは重大な責任を負っている」と指摘。「ウクライナの食料生産と輸出を妨げるすべての行為を無条件で終える」よう要求した。
 陸路による代替輸送も増えてはいる。このためにバイデン米大統領はウクライナと接する欧州地域に臨時の穀物倉庫を新設することを明らかにしている。
 ただ、黒海経由に勝る効率的な輸送ルートは見当たらない。ロシア、ウクライナ、トルコ、それに国連も加えた四者による安全航行に関する協議の開催が浮上しており、事態打開を期待したい。
 ロシアは食料危機は西側の対ロ経済制裁のせいだと主張し、制裁解除を要求している。筋違いも甚だしい。穀物を人質にしていると批判されても仕方がない。侵攻をやめ、国際社会の一員として責任ある行動をとるべきだ。

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