必要な介護、諦めるしか… 「原則2割負担」財政審が提案

2022年6月29日 08時00分
 二〇二四年度の介護保険料・介護報酬の改定に向け、利用者の負担を増やす案が浮上している。財政制度等審議会は五月に財務相に提出した建議で、自己負担を原則二割に上げることやケアプランの有料化などを提案。二一年度の前回改定では見送りになったが、介護の現場からは「もう負担増は避けられないのでは。実行されればサービスが必要でも諦める人が増える。各党は参院選の争点にするべきだ」との声が上がる。 (五十住和樹)

◆ケアプランは有料化案 家族の離職、誘発も

 「二割負担となれば、今のサービスを断念するしかない」。埼玉県新座市で介護事業を手がけるNPO法人「暮らしネット・えん」代表理事の小島美里さん(70)は、自宅で一人暮らしをしている八十代の男性利用者の今後を心配する。
 男性は認知症で要介護1。毎日、体調などに応じて訪問(電話による服薬や安否の確認を含む)、通い、宿泊のいずれかのサービスを受けながら生活を維持している。この小規模多機能型居宅介護の一カ月の利用料は定額。現在は食費などを含め約三万五千円だが、自己負担割合が一割から二割に変われば、五万円近くに跳ね上がる計算だ。男性の年金収入を考えると、利用を諦めざるを得ない。
 その場合、訪問介護や通所介護などの組み合わせに切り替えるしかないが、高血圧などの服薬管理や安否確認を毎日できず、病状のコントロールが困難になりかねない。施設入所すれば安全だが、有料ホームは経済的に難しい。小島さんは「負担増は介護保険の持続可能性を確保するためというが、制度は持続してもお年寄りが捨て置かれたままになる。どうしてくれるんだという気持ち」と憤る。
 自己負担は基本的に所得に応じて異なり、一五年から一定所得以上の人は二割に。一八年には現役並み所得の人に三割負担が導入された。利用者の約九割は一割負担で、一律二倍になれば影響は大きい。
 厚生労働省によると、要介護認定を受けている人は昨年四月時点で約六百八十四万人。そのうち実際に介護サービスを使った人は約五百七万人にとどまる。社会福祉の情報を集約・発信する「市民福祉情報オフィス・ハスカップ」(東京)を主宰する小竹雅子さん(65)は「サービスが必要なのに使わない百万人を超える人のうちの一定数は、費用負担が原因だ。経済的な理由で利用を諦める人を増やす政策は国民の不信感を広げる」と指摘する。
 介護給付の縮小も進む。要支援の利用者の訪問介護と通所介護は一七年度末までに介護給付の対象から外され、予算の制限がある自治体の「介護予防・日常生活支援総合事業」に移行された。今回の建議は「軽度者(要介護1と2)も総合事業へ移行する」ことを検討するよう求めている。
 小島さんは「要介護1と2は一人歩き(徘徊(はいかい))をするような認知症の人も多く、軽度者ではない。ヘルパー不足の中で報酬の少ない事業を行う業者は多くなく、利用者が必要なサービスを受けられない事態を招く」と懸念する。
 ケアマネジャーが利用者の状態や要望に応じて作るケアプランの有料化も、以前の建議に続いて提唱された。東京都渋谷区でケアマネの事業所を運営する服部万里子さん(75)は「困り事があっても相談する人が減りそう。高齢者の状態は変化しやすく、ケアマネが入らなければ生活の質の低下や虐待を見過ごす危険がある。介護離職も誘発しかねない」と訴える。

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