パリ同時多発テロの実行犯に終身刑 唯一の生存者、犠牲者130人の事件に区切り
2022年6月30日 11時32分
【パリ=谷悠己】フランスで2015年に起きたパリ同時多発テロ事件の判決公判で、パリの裁判所は29日、実行犯グループ唯一の生存者でテロ殺人罪などに問われたモロッコ系フランス人サラ・アブデスラム被告(32)に減刑なしの完全な終身刑を言い渡した。死刑のない仏司法制度では最も重い刑で史上5例目、テロ事件では初めて適用された。ともに裁かれた被告19人も禁錮2年~終身刑の実刑判決を受けた。
発生から6年以上。昨年9月に始まり、130人の犠牲者の遺族や現場に居合わせた被害者ら2000人以上が参加した異例の規模の公判の1審が終結したことで、仏テロ史上最大の事件は1つの区切りを迎えた。
仏メディアによると、アブデスラム被告のほかテロ計画に深く関わった一部の被告には終身刑などの厳刑が科された一方、計画の全容を知らずに協力した被告らの量刑は求刑を下回り、明暗が分かれた。被害者側弁護士の1人は「多くの被告が控訴することで被害者らに負担をかけないよう、裁判所が配慮したのではないか」と推察した。
事件は15年11月13日に発生。サッカー競技場周辺での自爆とカフェテラス、コンサートホール「バタクラン劇場」での銃撃が連続して発生。殺害に関与した実行犯9人は自爆や治安当局の銃撃で死亡した。
アブデスラム被告もカフェで自爆予定だったとされるが、公判で「店内で楽しむ同世代の若者を見て起爆するのをやめた。私は誰も殺していない」と述べ、寛容な判決を求めていた。
◆死刑のないフランスで最も重い刑 遺族や被害者ら安堵
10カ月近い異例の長期公判を法廷や専用のウェブラジオによる中継で傍聴してきた被害者や遺族らは、実行犯グループ唯一の生存者サラ・アブデスラム被告に仏司法制度最大の厳刑が科されたことに安堵した。
コンサートホール「バタクラン劇場」での銃撃で息子を亡くした遺族団体「13オンズ15」のフィリップ・デュペロン会長はニュース専門テレビBFMに「これまで抱えてきた気持ちを法廷で吐き出して一定の達成感を得ていた遺族らにとって、この極端に重い刑はさらに満足できるものになった」と強調した。
現場から逃げ延びた被害者団体「ライフフォーパリ」のアルトゥール・デヌーボー会長は「10カ月近い審理のかいがあった。司法への信頼を再認識した」と評価。法廷内では被害者が身を寄せ合って判決を傍聴していたといい、「被害者という言葉を過去形にすることができれば。これからはそれぞれが新たな生活を構築する時だ」と述べた。
別の被害者は「重かったページをやっとめくることができた」と振り返った。(パリ=谷悠己)
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